2021年7月28日

 

中期経営計画(2021-2023年度)について

 

1.中期経営計画策定の背景

 

 少子高齢化や人口減少などの構造的変化により、小売市場の縮小が避けられないなか、当社グループは、マーケットシェアを持続的に拡大するため、2005年度から長期的な視点に基づいた事業構想「GP(グランプリ)10(テン)計画」を策定し、取り組みを進めてきました。

 2015年度から開始した「GP10計画 ステージⅡ(GP10-Ⅱ(セカンド))」では、「関西ドミナント化戦略」として、顧客の日常生活から非日常生活まで対応する店舗ネットワークの構築によるマーケットシェアの拡大を掲げ、この事業構想に基づき、2019年度からは、中期経営計画「GP10-Ⅱ フェーズ2」を推進してきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした急激な社会環境・消費環境の変化を受けた現状と今後に対する認識を踏まえ、昨年10月に中期経営計画を取り下げ、新たな計画の策定を行うこととしました。

 

 今回のコロナ禍により、次のように社会や生活スタイルは大きく変容を遂げています。

 

  • 急速なデジタル化・オンライン化
    幅広い世代やジャンルで新しいライフスタイルが浸透しています。
  • 生活者やビジネスパートナーとダイレクトにつながるネットワーク型社会への移行
    オンラインでのアクセス・コミュニケーションが容易になり活発化したこと、デジタル・ソーシャルネイティブな若い世代が社会の大きな位置を占めるようになってきたこと、作り手が直接販売するD2Cビジネスが拡大していることなど、ネットワーク型社会への移行が大きく進展しています。
  • 都心立地の優位性揺らぐ
    テレワークの定着で通勤や通学による毎日の人の移動が減少する一方、住まいのある地域への関心が高まり、行動半径が縮小したことで近隣店舗の利用頻度が上がっています。

    これらの環境変化に対し、
  • リアル店舗とデジタル技術を融合したビジネススタイル(OMOスタイル)構築
  • 顧客とのコミュニケーションを起点とした新たなビジネスモデルへの変革
  • 都心集客型からの変革と百貨店への依存度低減による、収益源の多角化とグループ収益構造の再構築
    に向けて、当社グループを進化させていかなければならないと考えています。

 

2.グループビジョンの実現に向けて

 

 当社グループの強みである、お客様や地域社会とのつながり、信頼、ネットワーク、並びに阪急阪神両本店を軸とする強いブランド力、多彩な顧客接点と顧客基盤を活かして、当社グループの基軸である「関西ドミナント化戦略」の推進と、ステークホルダー、とりわけ地域社会・住民との関係性を深めるサステナビリティ経営に取り組みます。

 これらを通じて、お客様のマインドシェアNo.1とマーケットシェアNo.1の同時実現により、グループビジョンである「「楽しい」「うれしい」「おいしい」の価値創造を通じ、お客様の心を豊かにする暮らしの元気パートナー ~地域社会と、子どもたちや地球の未来に貢献したい~」の実現と事業成長を目指します。

 

3.長期事業構想2030

 

 当社グループは、根本的なビジネスのあり方を見つめ直し、2030年に向けて、既存事業の再建・磨き上げ、新市場への展開、新事業モデルへの挑戦を軸とする長期事業構想を策定いたしました。

 グループの目指すビジネスモデルを新たに「コミュニケーションリテイラー」と設定し、デジタル技術とリアル店舗を融合したお客様とのダイレクトなコミュニケーションを重ねることで継続的な強くて深い関係を築き上げ、それをベースにさまざまな商品やサービスを提供しビジネス化していくことで、お客様に「楽しい」「うれしい」「おいしい」生活をお届けし、地域とともに成長し続けていきたいと考えています。

 そして、ターゲットとするお客様を「富裕層」「スモールマス」「マス」の3つの性格に分類し、次に掲げることに取り組む方針です。

 

 

  • 百貨店事業の再建
    コスト構造改革を進めると同時に、デジタルを活用したOMOの推進と、阪神梅田本店建て替え開業、神戸阪急と高槻阪急のリモデルを軌道に乗せることにより、「楽しさNo.1」の百貨店として、営業利益150億円以上の規模を着実で安定的に持続することができる事業体を目指します。
  • 食品事業の「第二の柱」化
    業務の徹底的な見直しと生産性向上への取り組み、イズミヤ・オアシスの業務統合に伴うコスト削減や原価率低減を図ることで、営業利益100億円をコンスタントに稼ぎ出すことができるよう、改革を進めます。
  • 商業施設運営を着実に
    ショッピングセンターとビジネスホテルを中心に、営業利益30億円程度を確保すべく、投資と運営の合理化を進めます。
  • 新市場への展開
    店舗商業における新しい市場への機会拡張として、10年後には30億円の利益を生む事業とするべく、まずは2021年4月に開業した寧波阪急事業を確立し、阪急うめだ本店と連携して、寧波・浙江省の富裕層・アッパー層に向けたハイエンドコンテンツ・ジャパンコンテンツの提供や、EC、関連事業を展開していきます。
  • 新事業モデルへの挑戦
    これまで培ってきた関西の市場と顧客基盤を活かして事業モデルを拡張する挑戦として、顧客サービス事業に取り組みます。マスマーケットで広く利用される食を中心としたオンライン軸のサービスコンテンツ開発や宅配事業の強化、リアル店舗との連携、株式会社ローソンや大阪府などアライアンスによるネットワークづくりを通じて、関西エリアでの新たなサービス事業化を目指します。そこで得られた顧客データと開発した機能をプラットフォーム化し、B2Bビジネスに展開することで、すべてを合わせて営業利益30億円を超える事業に育てていきたいと考えています。
  • インフラ開発
    コミュニケーションリテイラーの実現を支えるものとして、IT基盤の整備、デジタル技術を活用したOMOスタイルの確立、グループ顧客データ基盤の構築を行い、社会や住民の「絆」づくりにより地域に貢献します。

 

  2030年には「グループアクティブ顧客」数1,000万人、営業利益300~350億円、ROE 6~7%を目標とし、以上の取り組みを進めていきます。

 

4.長期事業構想2030における新・中期経営計画の位置づけ

 

 2021年度から2023年度の中期経営計画においては、コロナ前の営業利益水準への回復を目標に、

  • 百貨店事業の再建のため、コスト構造改革、OMOスタイルの確立
  • 食品事業の「第2の柱」化のため、SM事業の再構築、製造事業との一体的運営、アライアンスによる事業力強化
  • 将来の成長のための事業開発着手として、寧波阪急一番店化と関連ビジネス開発、オンラインを軸にした顧客サービス事業の立ち上げ・拡張
  • 基盤となるIT・デジタル化の推進

を重点項目と定め、長期事業構想実現に向けて取り組みを推進します。

次期3ヵ年(2024年度から2026年度)では、コロナ前の営業利益水準を上回り、収益源の多角化達成を目指します。

 

5.全社戦略

(1)新事業モデルへの挑戦

 当社グループの強みである、これまで積み重ねてきたお客様や地域との強いつながり・信頼を活かし、IT・デジタルと既存リアル店舗やサービスを融合・活用した、関西圏1,000万人の「グループアクティブ顧客」獲得に向けたサービス事業の開発に着手します。

 まず、百貨店・食品スーパーなどの既存事業の枠組みにとらわれず、多くの生活者が頻度高く利用する、地域生活に密着したオンライン機軸のサービスを開発します。当社グループの知見を活かすことができる「食」領域からスタートし、当社グループやアライアンスパートナーの既存店舗商業と連携して相乗効果を追求、さらにサービス領域を拡大して、1,000万人の生活者と常時つながり密接にコミュニケーションできる関係を構築します。

 次に、新規サービスを通じたつながりや生活者データ、さまざまなサービス機能からなる顧客データ/サービス基盤を構築し、決済・ポイント・配送・コミュニケーション・分析・マーケティング機能と合わせたプラットフォーム機能の提供、あるいは顧客データ基盤を活用した広告やマーケティング分析など新規サービスの提供によるB2Bビジネスの創出を目指します。

 これらの実現のために、今後、デジタルのメガプレイヤーや決済・物流などの事業者、各種専門家・企業、スタートアップやベンチャーとのパートナーシップを強化し、生活者だけでなく地域企業・店舗にとって価値のある新たなサービスを開発・提供し続ける事業モデルを構築していきます。

 

(2)IT・デジタル化の推進

 既にワークスタイル変革や業務の電子化を通じた生産性向上、OMO施策など既存ビジネスのデジタル化による価値創造の取り組みを加速させている一方で、これまでITに十分な投資ができていない状況のなか、3ヵ年で260億円を投資して、次のとおりDXに向けた新たなIT基盤の構築と現システムのリスク・課題対応とを両輪で推進します。

➢コミュニケーションリテイラーへの進化に向けた基盤づくり

グループ顧客データ基盤の構築、グループのEC/OMO基盤の構築、デジタル接客ツールの整備など既存プラットフォーム強化によるOMO化試行に取り組みます。

➢業務改革の加速

ワーク環境を再構築することで柔軟な働き方を実現すると同時に、本社オフィス面積を40%削減し、ゼロトラストモデルを目指したネットワーク整備、セキュリティ強化などIT基盤を刷新します。BPRやクラウド型サービス導入による生産性向上に向け、まずは百貨店社員全員に配布したスマートフォンを徹底的に活用し、統合された情報提供基盤を通じ営業でのコミュニケーションや教育・研修を効率化し、契約書・伝票など手続きのペーパーレス化や業務標準化に取り組みます。

➢システムリスク・課題への対応

これまで十分に投資できていなかった、POSやMDシステムなど各事業で使用しているシステム基盤の再整備、特にグループでの共通化に取り組みます。

また、DXに向けたIT基盤を構築し運用するための外部からの人材確保、OJTなどを通じた社内デジタル人材の育成を強化し、2021年4月より「IT・デジタル経営委員会」を設置して、全体を統制しながらDXを推進していきます。

 

(3)アライアンス

➢株式会社ローソンとの包括業務提携

両社の経営資源とサービスの融合により、関西ドミナントエリアで新しいサービスや事業開発を推進します。最初の取り組みとして、2021年7月26日より順次、アズナス全98店をローソンブランドへ転換し、 2021年度下期には百貨店EC商品のローソン店頭での受け取りを始めます。また、 両社間で店舗開発、商品・物流、マーケティング、データ活用・新サービス開発、サステナビリティの5つの部会を設け、クイックウィンと中長期の連携確立を進めます。

➢ニュージーランドのImagr Limited、東芝テック株式会社との共同開発

2021年4月より画像認識AIカート実用化に向けた実証実験を開始し、食品スーパーにおけるスマートショッピングと店舗運営効率化の取り組みを推進します。

今後も、事業パートナー、決済、物流、スタートアップなどとのアライアンスを強化し、新たな価値提供モデルの構築を目指します。

 

(4)新市場への展開 中国浙江省・富裕層

 寧波阪急は2021年4月、百貨店の強みとSCの強みを併せ持つ中国初の「体験型デパートメントモール」として、「ハイエンド&高感度ファッション」「上質で楽しい食スタイル」「体験とエンターテインメント」「ジャパンコンテンツ」の4つの柱で開業しました。開業後は6月までの目標を6割上回る順調なスタートとなっています。

将来展開としては、寧波阪急事業を確立したうえで、寧波阪急を拠点にECや高級食品スーパー、サービス事業など関連事業を開発し、阪急うめだ本店との商品・コンテンツの連携、顧客連携、越境ECへの取り組みを通じて、高い経済力・購買力を持つ中国浙江省の富裕層・アッパー層に向けたビジネス展開による新市場での顧客開拓を図ります。

 

6.事業戦略

(1)百貨店事業の再建

 百貨店業界はかねてより売上規模の縮小が続き、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下で長期休業を余儀なくされ、近年業界を下支えしてきた訪日外国人によるインバウンド消費も大幅に減少しています。消費スタイルと価値観の変化はめまぐるしく、ニューノーマルの生活様式定着により、さらに厳しい事業環境が継続すると見られます。

価値観の多様化やデジタル化の浸透、地球環境保全への関心の高まりなど、劇的に変化する時代だからこそ、「お客様の暮らしを楽しく、心を豊かに、未来を元気にする楽しさNo.1百貨店」をビジョンに、次のことに取り組みます。

 

➢OMOスタイルの確立

Webカタログの充実やオンラインコミュニケーションの強化、デジタル接客ツールの整備に加え、月間売上1億円を突破したリモートショッピングサービス「Remo Order(リモオーダー)」など、リアルとデジタルを融合した新たな購入プロセスの開発と提供に取り組みます。リモオーダーによる売上は年間50億円ペースへ引き上げます。

また、阪急阪神両本店の名物催事にWebセミナーやECを組み合わせた拡張、デパ地下ケーキ宅配「阪急のケーキ宅配」「CAKE LINK」「TOKYO CAKE DIARY」など強みを活かした新たなサービスの展開、ECのラインナップ拡充や動画配信による魅力の最大化など、独自性の高いコンテンツ開発とリアル・デジタルによる相乗効果を発揮します。

ECとリモオーダーによる売上は2020年度の84億円(前年比186%)から、3年後に3倍となる250億円の売上を目標とします。

➢新ロジスティクスセンター開設(2021年秋)

さらなるOMOスタイルの推進に向け百貨店の物流センター機能を集約し、自動倉庫や自動搬送機などを活用して物流効率や在庫オペレーションを大幅に改善し、よりすばやい物流を実現することで店頭在庫の流動性やECの利便性を高めサービス向上につなげていきます。

➢阪神梅田本店、再建店舗への重点投資

2021年秋、阪神梅田本店は「毎日が幸せになる百貨店」をストアコンセプトに建て替えグランドオープンします。2021年度以降150億円を投じ、「食の阪神」の魅力を最大化すべく面積を拡張し、店舗全体でスモールマスマーケットをとらえた共感型コンテンツを開発、「ナビゲーター」が顧客とともにコンテンツの魅力を発見・発信・コミュニケーション・ショッピング化するファンコミュニティ型百貨店として、リアルとデジタルを融合したOMOスタイルのモデル店舗を構築します。

神戸阪急は都市型百貨店としての標準的なMDの充実に加え、神戸らしさのエッセンスを取り入れた特徴的なフロアを構築します。高槻阪急は新しい郊外型百貨店モデルとして、百貨店とSCのベストミックスを目指します。両店で100億円の投資(2022年度・2023年度)を予定しています。

➢コスト構造改革

デジタル化やBPRによる生産性向上を通じて組織・体制を再構築し、業務の見直しや内製化により業務委託・人材派遣など外部経費を削減、活動方針を再定義して宣伝費・出張費・時間外手当などを継続的に見直し、2019年度比で25億円のコストを削減します。

加えて2021年度は、緊急事態宣言を受けた全館休業に伴い25億円の緊急コスト圧縮を行います。

 

(2)食品事業の「第2の柱」化

 食品スーパー業界は、高齢化や共働き世帯の増加を背景に加工・調理品の需要が増え、コロナ禍のステイホームによる内食需要の高まりも追い風になり、売上規模は拡大しています。

 当社グループでは、生活スタイルの変化で食の価値が見直されていることを受け、食品事業を「第2の柱」に育てていきます。

食品事業全体での一体的運営と、SM事業の標準化と運営力再構築を強力に推進する全社プロジェクトを組成し、仕入・オペレーション・本部組織などSM3社の運営機能統合、標準化とチェーンオペレーション運営力の再構築による生産性向上と収益力アップ、デリカ・ベーカリー・プロセスセンターなど製造と販売の一元化を遂行します。

 併せて、2021年度から2023年度の3年間で30億円を投じて70店舗を改装し、商圏に応じた店舗フォーマットへの転換を行います。IT・デジタルを活用した新しい価値の提供と効率化にも取り組み、セミセルフレジ・AIカートなどによるスマートショッピングと省人化を推進し、アプリや宅配事業などデジタルを活用した顧客とのコミュニケーションを強化していきます。

 また、2021年7月28日に、株式会社万代との包括業務提携基本合意を締結し、両社の規模を活かした共同調達と運営力の相互活用により、事業力を強化していきます。

 

(3)商業施設事業

 新規開設のSCとの競合にさらされ、コロナ禍でテナントの退店や出店意欲の減退が見られますが、当社グループが保有する商業不動産は郊外立地が主で、食品・ドラッグストアなどの日常品を中心としたテナント構成であることから、業績への影響は比較的軽微です。

 当社は不動産賃貸ではなく、施設の運営で収益をあげていくことを明確にするため、2021年4月に、株式会社エイチ・ツー・オー アセットマネジメントの保有資産を各事業会社に分割し、「不動産」セグメントを改め、SCおよびビジネスホテル運営で構成する「商業施設」セグメントに変更しました。グループにおける将来的な活用の見通しが立たない不動産は資産効率向上のため整理を進め、運営を継続する施設は魅力的な店舗づくりと合理的な運営体制を構築していきます。

 イズミヤGMSのSC化は、直営売場の縮小効率化と「ココカラファイン+イズミヤ」ほかテナント導入の推進により、全36店舗の対応を2021年度中に完了し、2020年度からの2年間でSCへの転換と不採算店舗の整理により20億円の利益改善を見込んでいます。引き続き業務の標準化や施設管理業務の見直しなど運営の効率化を進めます。

 また「「人」と「地域」がつながる近隣型商業施設へ」との方針のもと、地域コミュニティ拠点「イズミヤゆいテラス河内長野」(イズミヤ河内長野店4F)、子どもや保護者の支援拠点「子どもLOBBY」(イズミヤ門真店3F)の2つの公民連携施設を開設しました。今後も店舗ごとにそれぞれの地域に合った取り組みを行いSCの魅力を最大化することで、地域との「絆」活動を推進し集客力向上につなげます。

 ビジネスホテルのアワーズイン阪急を運営する大井開発は、収益改善のため新PMS(Property Management System)導入による省人化と低コスト運営を進め、法人営業の強化や新しいニーズをとらえたプラン提案により稼働率の向上を図ります。

 

(4)その他事業

 百貨店事業の落ち込みに伴いグループ内取引が減少し、専門店業績の悪化や業務サービス業態の開拓余地も限られるなか、各社事業の抜本的な見直しや投資効率の向上、業務効率化などによる財務体質改善が急務となっています。各子会社事業におけるマーケット変化や、人件費など経費効率の悪化を見据え、さらに踏み込んだ見直しが必要と考えています。

 各子会社は百貨店・食品など主要事業との連携・サポート体制を強化し、人材育成や柔軟な配置転換を通じてグループシナジーを最大限に発揮し、関西ドミナントエリアにおける事業基盤をより強固なものとすべく取り組みます。マーケット変化を細かくとらえた事業変革を実行し、一方でIT基盤の共通化やバックオフィス業務の集約による生産性向上をグループ全体で推進します。

 コンビニエンスストア事業においては収益改善のため、アズナス全98店をローソンブランドへ転換し、MDの充実やオペレーション改善により、転換前に比べて5億円の利益改善を見込みます。

 また、不採算・非効率に陥っている事業がないか継続的にモニタリングを行い、必要に応じて整理・撤退を行います。2021年7月に株式会社エイチ・ツー・オー スタイルネットの業務移管、2021年秋に株式会社エイチ・ディ ベースモードの事業撤退、2022年3月末までに株式会社カエトクサービスの事業撤退を行うことを決定しています。

 

(5)セグメント別P/L

 業績予想の前提は次のとおりです。

➢新型コロナウイルス感染症第5波の到来と緊急事態宣言の再発令を想定するも、店舗の臨時休業などは織り込まず、2021年10月まで売上は一進一退

➢百貨店事業の国内需要は2021年11月から徐々に回復すると見込む

➢百貨店事業の免税売上は2022年度までは回復を見込まない

 

  

7.サステナビリティ経営の推進

 

 当社は、本中期経営計画と長期事業構想2030をもとに、2021年秋に発行予定の統合報告書において、サステナビリティ経営方針、重点テーマ(マテリアリティ)の取り組み方針および中長期目標を公表する予定です。それに向けて、現在グループ全体で議論と取り組みを進めています。

 2021年4月に「サステナビリティ経営推進委員会」を設立し、代表取締役社長が委員長を務め、全社挙げての取り組み推進体制を整備しています。グループビジョンを受けて、グループの持続的な成長へのサステナビリティ経営方針の策定、「地域の絆」「子ども」「自然環境」などマテリアリティの特定とコミットメントに対して議論が進行中です。

 また、気候関連課題に対する目標設定や開示の充実化に向けて、日本政府のカーボンニュートラル宣言を踏まえた中長期目標や、CDPへの回答を通じた気候関連課題への取り組みの開示について検討を進めています。

 百貨店事業および一部のテーマは食品事業において、環境対策推進プロジェクトチームを発足し、食品ロス削減、プラスチック削減、衣料品廃棄削減、什器廃棄削減など環境・社会関連課題に取り組んでいます。

 2021年7月には大阪府と包括連携協定を締結し、子ども・教育、地域活性化、環境などの分野で共同取り組みを推進しています。子ども・教育分野では、阪急うめだ本店のイベント「HANKYU こどもカレッジ」でのスペシャルプログラム開催など、豊かな人間性や健全な心身の育成への貢献、地域活性化分野では、「大阪カレーもん」の開発および販売など地域ブランド認定品の販売・プロモーション支援、環境分野では、事業者・消費者・行政からなる食品ロス削減ネットワーク懇話会への参画など食品流通全体における食品ロス削減取り組みについて協議しており、当社グループの多様な顧客接点を活かして地域課題へ多面的に取り組んでいきます。

 その一環として、店舗を活用した市町村との取り組みである「イズミヤゆいテラス河内長野」には市社会福祉協議会が移転し、多世代交流を促す多目的スペースを設置、イズミヤ門真店では市の子どもや保護者の支援拠点「子どもLOBBY」を開設しました。今後も地域からの信頼を強みとして、店舗と地域社会の活性化に貢献します。

 

8.グループ本社機能の強化・再構築

(1)IT・デジタル/人事/計画管理

  • IT・デジタル
    デジタル変革を迅速に適える次世代IT/DX領域の構想と具体化、各種プロジェクトの推進、セキュリティの強化などを目的に、外部専門技術者の登用・活用や社内人材育成を通じて、グループ全体のIT・デジタル化を強力に推進する体制を構築します。
  • 人事
    グループ横断での人事制度および人事マスタの整備、効率的かつ効果的な要員の再配置、人材育成のため、一貫した人事施策の立案と実行に取り組みます。
  • 計画管理
    中期経営計画や3ヵ年事業計画の進捗管理、計画に対する修正を適切に実行できる計画管理機能を構築します。

 

(2)BPR推進

 グループビジョンに掲げる価値創造のため、組織風土を改革し、成果を生み出す組織にすることを目的に、グループ全体でBPRを推進していきます。

 イノベーション思考への転換による意識改革と、新しい取り組みを後押しする物理的環境や施策の実行並びにITの積極活用を軸とした環境改革を進め、意識と環境の改革により実現するアジャイルでコラボレーティブな行動改革を三本柱とし、風通しが良く活気にあふれ、毎日変化が生み出される企業風土を目指します。

 また、改革実施に伴う業務プロセスの見直しや標準化・集約化・デジタル化などにより、グループ全体の徹底した合理化と工数・コストの削減を図ります。

 

(3)本社移転

 新しい働き方の実現による価値創造、従来型ワークスタイル変革による効率化・コスト削減、オフィス環境刷新による求心力・人材確保を目的として、2022年夏を目途に本社オフィス移転を計画しています。

 移転先の新オフィスでは、フリーアドレスやリモートワークによる自律的で柔軟な働き方への変革を目指し、新たな価値を生み出すコラボレーションスペースやミーティングスポット、部門・グループ・会社を越えた共創を促す機能と仕掛け、多様な働き方をサポートするWeb会議ブースやソロワークスペース、健康的でサステナブルな設備・環境を実現します。これに伴い、働き方の見直しやペーパーレス化によりオフィス面積を40%削減します。

 併せて、本社移転を契機に全社のBPRや業務集約を進め、業務を抜本的に削減し、スマートフォン・PC・グループウェアなど従業員へのIT装備でコミュニケーションコストを削減、定型業務の省力化による効率性向上を図ります。

 

9.人事施策

 

 個人・組織のパフォーマンス最大化のためには、コスト構造に見合う生産性の高い組織づくりと、一人一人が個性を発揮し活き活きと自律的に働く仕組みづくりが課題であると考えています。

 生産性の高い組織づくりのために、要員ポートフォリオを策定し、ジョブの再設計や業務の効率化・外注業務の内製化、業態転換や統合に伴う人員再配置、経営人材の育成やITなど専門人材の確保・活用によりグループ全体の組織力の向上を図ります。

 自律的に働く仕組みづくりのためには、ジョブ型・複線型など人事制度の整備、タレントマネジメントによる職務・役割と個人のマッチング、女性活躍推進やシニアが活躍できる場の創出、健康経営などに取り組みます。

 これらを通じて、社員一人一人と組織のパフォーマンスの両方を最大化し、グループ人材の流動化・活性化を目指します。

 

10.投資計画

 

 投資の優先順位や投資基準を明確にして、投資効率の向上を図ります。

 優先順位の1番目は店舗・営業施設の主要投資で、阪神梅田本店、百貨店の再建店舗への重点投資、物流センターの統合、SM既存店改装などに集中投資します。なお、SM新規出店は原則として当面凍結します。2番目はIT/DX投資で、BPR、OMO推進のインフラとなるIT基盤整備に集中積極投資します。3番目は更新投資で必要最小限の設備更新・営繕投資に絞り込みます。

 3ヵ年の投資額は950億円(2021年度300億円、2022年度370億円、2023年度280億円)を計画しており、明細は次のとおりです。

  • 店舗・営業施設主要投資
    阪神梅田本店建て替え150億円、神戸阪急・高槻阪急リモデル100億円、百貨店新ロジスティクスセンター開設75億円、SM既存店改装(商圏に応じた店舗フォーマットへの転換)30億円
  • IT/DX投資
    OMO、グループ顧客データ基盤、ワーク環境構築 80億円
    POS、MDシステム、情報基盤刷新ほか 180億円
  • 顧客サービス事業開発着手 10億円

 

11.財務・資金計画

(1)資産効率向上

 バランスシートのスリム化、資金化により財務体質の改善・安定を図ります。

 不動産は非店舗を中心に、本社ビルを含む利用効率の低い物件をすべて売却します。2021年度から2023年度での売却物件は15件程度、売却益は約300億円を見込んでいます。

 株式については政策保有株式を大幅に縮減し、既に2021年度実績で8銘柄を売却し、売却額は94億円、売却益は65億円です。

 

(2)有利子負債の削減・資金計画

 有利子負債は近年の大型プロジェクト投資と収益環境悪化により増大しており、阪神梅田本店建て替え、神戸阪急・高槻阪急リモデル、IT基盤整備など大型投資案件が続きますが、追加借入は行わない方針です。投資キャッシュフロー水準が下がり、先行投資の効果などで営業キャッシュフローが増加すれば、借入の圧縮を進めます。

 キャッシュフローアロケーションについては、営業キャッシュフローと資産売却による投資キャッシュインフローによって大型案件の資金源を捻出します。

 3カ年での営業キャッシュフローは460億円、資産売却などによる投資キャッシュインフローは700億円、設備投資950億円を実施したうえで、フリーキャッシュフローは200億円超の水準を確保し、成長のための先行投資と健全な財務基盤を両立させる計画です。

 

12.数値目標と重点指標(KPI)

(1)営業利益

 2023年度にコロナ前の営業利益水準である170億円に回復、2030年度に営業利益300~350億円を目指します。

 2030年度に向けて、百貨店事業150億円以上、食品事業100億円以上、商業施設事業30億円、寧波・浙江省事業30億円、顧客サービス事業30億円を目標とし、収益源多角化の実現を目指します。

 

(2)ROE/ROIC

 バランスシートのスリム化と利益水準の回復により効率性を向上し、2024/3月期にROE  2%水準への回復、2031/3月期にROE 6~7%を目指します。

 

(3)株主還元・配当政策

 中長期にわたる適正な財務体質の構築と成長投資に必要なキャッシュフロー、事業年度ごとの業績を勘案しながら安定的な利益還元を行うことを基本に、親会社株主に帰属する当期純利益、連結純資産、連結キャッシュフローの中長期の計画から総合的に判断して最適な成果配分を行います。

 当期純利益水準が回復するまで、当面は1株当たり年間配当額25円を維持し、長期的には配当性向30~40%を目指します。

 

(4)主要な指標の推移 

以 上