2023年10月19日

阪急うめだ本店10階フロア「うめだスーク」のなかでも数多くの作家と交流が盛んな売り場「スーク暮しのアトリエ」では2021年から大阪府産間伐材の利用に注力してきました。現在までの取り組みを振り返りながら、2023年の夏に行ったイベントや今後の取り組みについて担当者に教えてもらいました。

 

阪急本店 趣味雑貨営業統括部  (左から)武田浩、坂上沙希子
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阪急本店 趣味雑貨営業統括部 (左から)武田浩、坂上沙希子

━━まずは普段のお仕事とサステナブル活動との関わりを教えてください。

 

(武田)

主に10階で行うイベントを取りまとめるバイヤーとして業務に携わる一方で、サステナブル活動プロジェクトでは10階の代表として「間伐材プロジェクト」に参加しています。実際の活動は、坂上さんをはじめとした売り場のプロジェクトメンバーが中心となって推進しています。

 

(坂上)

普段は売り場のマネージャーとして、「スーク暮しのアトリエ」の売り場と暮らしに特化した専門店など、いくつかの売り場を担当しながらマネジメント業務を主に担当しています。その中で、サステナブル活動の際には、プロジェクトメンバーと協業しながらバイヤーという立場でも関わっています。

作家さまとのつながりを活かした売り場づくり。

━━振り返る形になりますが、なぜ「スーク暮しのアトリエ」で間伐材を使うことになったのでしょうか。

 

(武田)

まずは阪急うめだ本店として「大阪 森の循環促進プロジェクト」を始めることになり、それに対して10階フロアにある各売り場で「森林破壊」「ゴミ問題」「伝統文化の衰退」などのサステナブル活動に取り組む方向になったことがひとつあります。そのうえで、「スーク暮しのアトリエ」では木材を扱う作家さまとのネットワークがあることと、作家さまからお客さまに商品を提供することが「循環のサイクル」の象徴になると考えました。

 

━━売り場の特性を活かそうということですか。

 

(坂上)

そうですね。「スーク暮しのアトリエ」は、もともと作家さまとのつながりや交流が盛んです。間伐材のイメージを作家さまによって良い方向へ変えられると思いましたし、実際にこのプロジェクトを開始してから協力していただく作家さまも増えました。今年のイベント時には、木に触れていただきたいという思いから、ヒノキの間伐材を使用したバターナイフづくり」のワークショップも行いました。


作家さまの作品が中心ではありますが、材を提供していただいている製材所の方が製作された「カッティングボード」や「一輪挿し」も展開しています。

カッティングボード
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カッティングボード
一輪挿し
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一輪挿し

一方から見れば端材、もう一方から見れば宝。

━━開始当初から3年経っても、変えずにこだわっている点などはありますか。

 

(坂上)

開始当初から作家さまと一緒に製材所に直接足を運び、木材の買い付けを行うことを大切にしてきました。通常「価値がない」と判断されがちな端材も、作家さまのアイディアと技術があれば、「価値のあるもの」に生まれ変わらせることができると考えています。

例えば、ご協力いただいている作家さまのなかに、家具制作時に出る端材を使用する方がいらっしゃいます。「自分が作りたいもの」という制作スタイルではなく、一つひとつの端材や木目、その端材の特徴を生かすので、大きさや形などは作品ごとに異なり、すべてが「唯一無二」の作品になります。

ほかにも間伐材を使った積み木を制作していただきました。この積み木は、サイズや形が揃っているものではなく、お好みに合わせて1点から購入できるようにしました。こちらも品定めするお子さんの表情を見ると、期待を上回るものでした。

━━商品の個体差も木材の魅力なんですね。

 

(武田)

木材に限った話ではないのかもしれませんが、一般的に商品が市場に出回る際、整った状態や美しい外観が重視される傾向があります。ですが、お客さまにとっては、「整った状態」よりも、見たことがない、見る機会がなかった「端材の丸太」のほうが「愛着が持てる」といった声を現場で聞きました。すべてが整った状態ではなく、ある程度の個性や風合いを持つ商品の方が魅力的に感じられる場合もあるのです。こちら側で「価値のないもの」だと決めつけることなく、実際の体験を通してより価値を感じていただける工夫を大事にしていければと思っています。

夏のHANKYUこどもカレッジにて。

━━今年、新しく挑戦したことはありますか。

 

(坂上)

この夏に新しい視点の企画を実施しました。そのひとつとして「HANKYUこどもカレッジ2023」の中で「間伐材の木箱で作る植物標本作り」というワークショップを開催しました。フレームには間伐材を、標本には茎が短い、曲がっている、といった理由で市場に出回らない規格外のお花を使いました。個性を活かした世界でひとつだけの標本作りを楽しんでいただきました。

 

━━参加した子どもさんの様子はいかがでしたか。

真剣な表情の子どもたち
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真剣な表情の子どもたち

 

(坂上)

ワークショップの始めに間伐材と規格外の花について勉強できる時間も設けました。時代の流れとしても「SDGs」に対する意識や関心は、私たちが想像していたよりも高く、みなさん熱心にお話を聞いてくださり、それぞれ個性豊かな作品を作ってくれました。

 

━━すでにSDGsが暮らしに馴染んでいる世代なんですね。企画をした感想はいかがでしたか。

 

(武田)

そうですね。このようなイベントに、製材所の方が参加できる機会も非常に重要だと考えています。間伐した木が本来の形から加工され、木材として流通していくプロセスの説明など、製材所ならではの視点で発信していただけると思っています。また、こうしたイベントに参加いただくことで、お客さまからのニーズや要望を知っていただけたり、逆にお客さまも、例えば大きな一枚板が欲しいと思った時に木材のプロに相談できると知っていただけたりします。今後、製材所とお客さまの交流の場としても促進できたらと思います。

 

━━体験イベントは反響が大きかったそうですが、感想などは届きましたか。

 

(坂上)

はい、保護者の方々から「こういう体験はなかなかできないから良い機会だった」とか「イベントを通して、親子とも森林問題に興味を持つきっかけになった」という声をいただきました。引き続き、持続可能な未来に貢献できるような取り組みをしていきたいと思っています。