2023年9月26日

「大阪 森の循環促進プロジェクト」で生まれたネットワークを売り場環境に活用し、2023年4月に阪急うめだ本店8階に「人と自然の共生」をコンセプトに掲げた新しい売り場「GREEN AGE(グリーンエイジ)」が誕生しました。今回はこの売り場を作り上げた社員に完成までの話をお聞きしました。

 

(左から)阪急本店 グリーンエイジ営業統括部  石田良太、CM室 D&Cマネジメント部  大鍜治聖一

――まずは普段の仕事と「GREEN AGE(グリーンエイジ)」に携わった経緯を教えてください。

 

(石田)

営業統括部の責任者をしています。もともとはマーケティングの部門に所属し、生活者の変化の兆しを捉え、新しい価値を生み出すミッションのもと、業務にまい進していました。8階フロアを大きく改装することになった「GREEN AGE(グリーンエイジ)」のプロジェクトは、第一フェーズはマーケティング部門が中心となり、自然共生の本質やマーケットへの置き換え、お客様のニーズの有無やマーケットの切り取り方など構想部分に力を注いで取り組んできました。売り場化を進めることが決まってからは商品部や販売部、CM室などと具体化に向けたプラン作りとコンテンツの開発を進めてきました。

 

(大鍜治)

私は、CM(コンストラクションマネジメント)室のD&Cマネジメント部に所属しています。百貨店に入っている店舗の改装に関する什器や内装・装飾などのマネジメント業務を担当しています。2021年から、この売り場の構想に参加しました。

すべてが異例だった「GREEN AGE」。

――どのようなところから構想や設計のアイデアが生まれたのでしょうか。

 

(石田)

自然共生の価値観を深堀りしていく中で、地球環境やサステナビリティという考え方とは切っても切り離せないものであるということが共通認識になりました。そのような思想を新しい売り場で表現するには、これまでのモノの提案だけでなく売り場サービスや売り場環境まで一貫した新たなチャレンジが必要だという議論から現在の売り場の方向性を定めました。構想を始めてから、具体化するまで4年かかりました。

 

――なかなか、構想がまとまらない時期が長かったんですね。

 

(石田)

そうですね。構想段階の途中でコロナ禍となってしまい、対面して購入することへの不安が広がっている状況でした。その中でのリアルでの新しいチャレンジに対する不安はお取引先も大きくお持ちでした。

 

――構想が進展しないなかで、大鍜治さんは「どの素材を採用するか」を話されていたということでしょうか。

 

(大鍜治)

そうですね。部署内で何度もサステナブルな素材について話し合っていました。「木材・間伐材を活用する」というアイデアが出ていたのですが、どうすれば実現できるのかをさまざまな角度から考えていました。10年継続可能な売り場のコンセプトと間伐材をどのように掛け合わせるのか、どうやって間伐材を使うのか、具体的な使用方法について模索が続いていました。

伐採作業風景
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伐採作業風景
伐採直後の木材
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伐採直後の木材

――構想に時間をかけたことで実現したものはありますか。

 

(大鍜治)

今回、店舗づくりの方法も再検討しました。例えば、小売業界などでは古くなった内装・設備を廃棄して、新しい内装・設備を構築する「スクラップアンドビルド」という手法が一般的ですが、これはサステナビリティの観点からは望ましくない方法です。そこで、床も環境造作も什器も10年以上は同じ内装・設備を利用し続けられる「10年継続可能な売り場づくり」を想定しようと動き始めました。

 

(石田)

大鍜治さんたちから、什器も10年継続可能なものにする提案をしてもらい、「環境負荷を最小限にするデザインで」というアイデアを膨らませていきました。具体的には、間伐材を使用する際に釘を極力使わない、昔ながらの木組みの手法を取り入れるなどです。結果的にはすべて木組みで作ることは難しかったですが、売り場をつなぐシンボル的な要素となる天井のやぐらはそうした議論の中で発想しました。

 

(大鍜治)

「GREEN AGE(グリーンエイジ)」で使用している間伐材は自然乾燥したものなので、やぐらを含めて、売り場全体には今でも少しひのきの香りがすると思います。天然の木材らしい印象を与えることができたのは、こういった細部に対するこだわりを貫けたからだと思います。

間伐材を利用して作成した什器
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間伐材を利用して作成した什器
コミュニティパーク
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コミュニティパーク

世界有数の森林大国だからこそ今後の森林問題を考えたい。

――間伐材を取り入れる事例は、全国的に増えているのでしょうか。

 

(大鍜治)

関東では木材の利用が増えているそうですが、関西は進んでいないと聞きました。私たちも間伐材を使用した売り場づくりの経験がなく、製材所さんとのネットワークすらありませんでした。幸いなことに、阪急うめだ本店10階の売り場「スーク暮しのアトリエ」が間伐材を活用したプロジェクトを進めており、そのコネクションを通じて製材所から木材を卸してもらうことができました。「スーク暮しのアトリエ」との協業を通じて「フレキシブルな什器」を製作することができたことは、強みになりました。

 

――実際の現場へ見学に行かれて、印象が変わったことはありましたか。

 

(大鍜治)

実際に製材所の見学をして、密集化してきた立木を「間引く」タイミングで間伐材が取り出されるので、普段のスケジュール感では調達できないと痛感しました。また、夏季は木の含水量が高いことや、自然乾燥は人工乾燥よりも時間がかかることなども実際に見学して、やっと理解しました。

 

――石田さんも製材所に出向いたと聞きましたが、実際の森を見ていかがでしたか。

 

(石田)

そうですね、実際に森では間伐された木が山に放置されている状況も目にしました。間伐材の利用量がまだまだ不十分で、使われないまま残されている問題を変えていかないと「山を守る」とは言えないんだと肌で感じました。

構想から4年。「GREEN AGE(グリーンエイジ)」プロジェクトが完成!

――売り場が完成した瞬間は、いかがでしたか。

 

 

(石田)

「今までの売り場づくりとは全然違う」「居心地がいい空間だ」という感想をたくさんいただきました。この売り場での買い物が「うれしい」「楽しい」「かっこいい」といった感情で溢れてほしいと思いました。

 

(大鍜治)

売り場の象徴となる環境設計の材料に大阪府産の間伐材を使うことにこだわって良かったと思いました。

 

――大阪府の「CO2森林吸収量・木材固定量認証制度」第1号に認証されましたね。

認証書授与式の様子
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認証書授与式の様子

(大鍜治)

そうですね、ありがたいです。大阪府産の間伐材を内装だけではなく、机や椅子などの什器にも使ったことで、認証制度の規定利用量を上回ることができました。この木材利用(CO2木材固定量6.8トン-CO2)の取り組みが認められたことは嬉しかったです。

 

(石田)

百貨店として持続可能な売り場づくりに取り組んでいることに共感していただけるお客様が増えれば、非常にありがたいです。大阪府産の木材・間伐のことを知っていただく、ひとつのきっかけになれたらと思います。

 

 

――各方面からの反響を受け、この先はどのように考えますか。

コミュニティパークでのワークショップの様子
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コミュニティパークでのワークショップの様子

(大鍜治)

今回、百貨店の売り場でもサステナビリティ環境を表現できることが証明されたので、もっと多くの売り場で導入できるよう努めていきたいと思っています。「『GREEN AGE(グリーンエイジ)』みたいな売り場を出したい」と言ってもらえるように製作を続けていけたらと思います。

 

(石田)

百貨店に来店いただくお客様にとって、大事なのは「動機」だと考えています。お客様が「あの売り場で買いたい」「阪急うめだ本店に行きたい」と思っていただける感情を大切にし続けたいです。

押しつけにならないよう、売り場に環境づくりに対する説明POPはあまり置かないようにしていましたが、こういった背景を知っていただける自然な導線を検討中です。引き続き地産地消の支持とサステナブルな環境づくりを伝えていければと思います。