最高金賞受賞商品の開発に携わったH2O食品グループデリカ部の大久保一貴部長(左)と温惣菜バイヤーの伊藤嘉宏さん

食品スーパー「阪急オアシス」の総菜「玉ねぎが決めて! 鶏唐」が4月13日、「第13回からあげグランプリⓇ」(主催・一般社団法人日本唐揚協会)の、中日本スーパー総菜部門・最高金賞を受賞しました。
最高金賞を目指して下味を大幅に改良し、持ち帰ってもパサつかないよう、2種類のパン粉とクラッカー粉をつかってなめらかな衣を実現した成果でした。担当者の声をお届けします。

(編集部)

スーパー総菜部門に挑戦!

「からあげグランプリⓇ」を主催している日本唐揚協会は、唐揚げが一番好きで、唐揚げを食べると幸せになれる人たちがつくっている組織、唐揚げファンに知られた存在です。2010年から、街の専門店などを対象にグランプリを開催し、2019年から始まったスーパーマーケットを対象とした「スーパー総菜部門」では、日本全国を、北・東・中・西の4ブロックに分けて審査、関西は中部とともに「中日本」で審査されます。2022年のグランプリには全国で136社がエントリーして、各ブロックで「最高金賞」「金賞」が選定され、阪急オアシスは、見事、中日本の最高金賞となりました。商品開発に携わった、エイチ・ツー・オー (H2O)食品グループデリカ部の大久保一貴部長と温惣菜バイヤーの伊藤嘉宏さんに聞きました。

ーー2人が所属する会社と部署について教えてください

 

大久保さん:H2O食品グループは、イズミヤ、阪急オアシス、カナートの、スーパーマーケット3社の運営を企画している会社です。3社ごとに存在していた商品部は、2021年4月にH2O食品グループに集約されました。われわれが所属しているのはその中の営業本部、デリカ・ベーカリー統括部デリカ部です。スーパー3社で販売する総菜商品の企画、開発を手掛けています。

ーー「からあげグランプリ」への参加はいつから?

 

大久保さん:阪急オアシスでは2021年に初めて参加し、今回、2回目の挑戦でした。「からあげグランプリ」には多くのスーパーが参加しているので、2回目で「最高金賞」を受賞できるとは、正直思っていなかったので、うれしいという前にびっくりしました。

ーー最高金賞をねらっていましたか?

 

伊藤さん: もちろん! ただ、2019年のスーパー総菜部門の創設以来、中日本の最高金賞はライバルスーパーが3年連続で受賞していたので、難しい挑戦だと感じていたのも事実。阪急オアシスは、2021年に金賞を受賞しましたが、さらに改良を重ね最高金賞を目指しました。1年間、試行錯誤を重ねての挑戦で、ライバルの4連覇を阻止し、最高賞を受賞できたことの喜びは大きいです。

「からあげグランプリ」で最高金賞を受賞したことを知らせる店頭の告知

下味、材料など、さまざまに改良!

ーー1年間、なにをどう改良したのですか?

 

伊藤さん:まず、下味を大きく変えました。2020年まではトビウオから取るあごだしがベースのだし醤油味でしたが、2021年に下味をリニューアルしています。スーパーマーケットには週に2、3回来店されるお客様が多いため、「毎日食べても飽きのこない」を目指し、やさしい味わいを追求しました。

 

大久保さん:2020年のグランプリ初参加の時は、その「まいにちからあげ」で挑戦しました。「最高金賞」をねらうには下味の原料の配合を変える必要があると考え、その結果、行きついたのが下味の隠し味の玉ねぎの分量をあげることだったのです。
 

ーー具体的な下味の配合は?

 

伊藤さん:最終的にいきついた下味は、兵庫・淡路島産の玉ねぎを生ですりおろしたペーストをベースに、かつお節、昆布、あじ節を使用した「にごり旨味だし」を隠し味にしました。3種類をブレンドした醤油、醤油もろみ、生姜、リンゴ、香味野菜などが配合されています。簡単にはまねできませんよ。

ーー玉ねぎはどれくらい多くしたのですか?

 

伊藤さん:玉ねぎの分量は、従来の「まいにちからあげ」に比べると、1.6倍になりました。あまり多くしすぎると焦げやすくなるので、玉ねぎの分量を決めるのに時間がかかりました。この改良でコクが増し、やさしい味付けに仕上がりました。

ーー見直したのは原料だけですか?

 

伊藤さん:衣も大きく改良しました。揚げ物は、揚げたてはサクサクとしておいしくても、冷めるとやはりパサつきが気になりますよね。持ち帰って食べてもパサつかないようにするにはどうしたらいいのかを追求し、実験を繰り返しました。なめらかな衣にするにはどうしたらよいのかを、とことん追求したのです。衣と鶏肉の一体感を出すために、2種類のパン粉とクラッカー粉の配合バランスを研究し、時間が経ってもなめらかな衣ができました。
 

時間がたってもなめらかになるように工夫された衣

ーーほかに工夫はありますか?

 

大久保さん:「たまねぎが決めて 鶏唐」はグループの総菜製造会社、阪急デリカアイと共同で開発を進めてきました。今回のレシピは、鶏肉の解凍から下味の配合、味付けまでを大阪市住之江区の阪急デリカアイ南港工場で終えて、店舗では揚げる直前に粉をつけるだけにしています。

 

伊藤さん:ずいぶん前は、鶏肉に味を染み込ませるために店舗で もみ込む作業をしていたのですが、下味の染み込みもいまひとつのうえ、生産性もあがりませんでした。グループで協業することで、味も生産性もアップしたと思います。
 

ーー秘策もありますか?

 

大久保さん:はい!  最後の秘密は商品にそえている“謎の粉”です。配合の詳細は企業秘密ですが……国産の柚子や山椒など数種類の原料を石臼引きして作った粉で、振りかけて食べると、香りと風味がさらに高まりますよ。

商品にそえられている謎の粉

唐揚げは人気であり競争が厳しい商品

ーーグランプリ最高金賞の唐揚げはどこで買えますか?

 

大久保さん:4月29日にオープンした阪急オアシス吹田SST店(大阪府吹田市)など数店で先行販売しました。6月からは一気に販売店を拡大し、阪急オアシス、イズミヤなどグループの食品スーパー約180店で購入できるようになりました。

ーー人気になりそうですね!

 

伊藤さん:ある食品メーカーの調査によると、唐揚げは「好きなおかずランキング」で2年連続1位になるほど人気総菜です。逆にいえばライバルが多い商品です。専門店、飲食店、お手製、冷凍食品、他のスーパーのデリカ売り場まで――み~んなライバルです。気を抜かずに商品改良に取り組んでいきます。