阪急メンズ大阪店長の猿木哲郎さん(左)と阪急メンズメディアプロモーション部の沖田和代さん

メンズファッションの拠点である「阪急メンズ大阪」(大阪市北区)が2021年3月、西日本の百貨店として初めて、公益財団法人日本環境協会が制定する「エコマーク」を取得しました。阪急阪神百貨店が運営する店舗でのエコマーク取得は、その年の12月に阪急メンズ東京(東京都千代田区)が続き、翌年3月には食品を扱う店舗としてはじめて川西阪急(兵庫県川西市)も取得に至り、阪急メンズ大阪はサステナビリティ活動のリーダー的な存在となりました。店内でCSR推進プロジェクトを発足させ、社内で第三者機関による評価を最初に獲得した阪急メンズ大阪の担当者の声をお届けします。

(編集部)
 

「エコマーク」の取得は第1ステップ

エコマークは、製品やサービスの「生産」から「廃棄」に至るライフサイクル全体を通して、環境負荷が少なく、環境保全に役立つと認められると、付与される環境ラベルです。日本環境協会が基準を制定し、認定の審査をしています。阪急メンズ大阪が取得したエコマークは小売店舗向けの基準をクリアして得られたもので、認定店舗は「エコストア」とも呼ばれます。環境配慮型商品の幅広い品揃えや、店舗の運営における環境への取り組み、お客様と一体となった環境配慮活動をしているお店である証明です。阪急メンズ大阪店長の猿木哲郎さんと、阪急メンズメディアプロモーション部の沖田和代さんに聞きました。


エコマーク「小売店舗」の認定基準

 

日本環境協会エコマーク事務局ホームページより

――プロジェクトが発足したのはいつですか?

 

猿木さん:2020年4月、店舗の課題解決に向けて4つのプロジェクトを計画しました。そのうちの1つ、店としての社会課題への取り組みを推進するのが「CSR推進プロジェクトチーム」です。ところが、直後に新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言により店舗は休業となってしまい、実際にプロジェクトが発足し、活動が始まったのは6月頃でした。

――エコマーク取得を目指したきっかけは?

 

沖田さん:私が商品部に所属していた2019年12月に、東京で開催された環境配慮型製品・サービスに関する総合展示会を訪問しました。その会場に、小学生が大勢、社会見学で来場しているのを見て、持続可能な社会を目指す「サステナビリティ」を重視しなければいけないことを強く感じました。展示会には日本環境協会もブース出展していたので、後日事務局を訪問。マーク取得企業の声として「エコマークの旗印を掲げることで従業員の目的意識が高まった」いう話を聞き魅力を感じました。

 

――すぐに阪急メンズ大阪での取得に動いたのですか?

 

沖田さん:実は、当時わたしは店舗の担当者ではなかったので、具体的な活動に移すことができませんでした。その後、2020年4月に阪急メンズ大阪に配属されCSR推進プロジェクトのリーダーに任命されたことで、「従業員全員がサステナビリティを自分の問題として取り組むための手段」としてエコマーク取得を目指すことを提案しました。

 

――スムーズに取得できましたか?

 

沖田さん:認証項目の内容についてわからない言葉や事象が多く、まずどこに確認すればよいのか――というところからのスタートでした。各項目に対してすべて証明できる書類や活動報告の提出が必要なのですが、提出したものが評価の対象にならないとして「有効ではない」とされたりして、何度もやり直しをするという苦労がありました。

 

――店の関係者は最初から協力的でしたか?

 

沖田さん:2020年7月に、エコマークの取得に取り組むことを決め、店内関係者に宣言しました。そのとき上がったのは、「見たことあるけどよくわからない」という声でした。それが2020年10月ごろには、取得に向け取り組むにつれて認知度もあがり、8カ月後の2021年3月に協会関係者が店舗を訪問して現地調査する際には、店舗関係者のほとんどが自分ごととして取り組んでくれるまでになりました。3月に取得が決定したとの知らせが入ったときには、売り場で「よかった」「うれしい」と声をかけられました。関係者全員が真剣に取り組んだことに、大変感動しました。

次のステップは「認定店舗」にふさわしい活動

――マーク取得後にプロジェクトチームは解散したのですか?

 

猿木さん:いえ、メンバーは年度ごとに変わっていますが、現在もチームはあります。チームの目的は「サステナブルな店舗運営の実現」でしたので、エコマークの取得はあくまでスタートでした。チームで2021年度はどんな取り組みをすべきかと考えたのです。出した答えが「エコマーク認定店舗にふさわしい活動をする」でした。つまり「従業員全員がサステナビリティに高い意識を持って取り組んでいる状態」にすることでした。

 

――具体的にはどんなことをしたのですか?

 

猿木さん:エコマークの取得は、取引先から店舗に来ていただいている方々の協力もあって成功したものです。ただ、どちらかというと百貨店の社員が中心となった活動でした。2021年度は、取引先社員を含め、改めて全館で取り組める企画をしようと考え、実施にいたりました。それが「マイサステナブルアワード」の創設でした。

――マイサステナブルアワードというのは?

 

沖田さん:「まずはできることから」をスローガンに掲げました。2021年10月、店内組織の最小単位であるユニットごとに、国連が提唱する「持続可能な開発のための17項目の目標、「SDGs17」の、どれかに当てはまる行動を「マイサステナ宣言」として設定してもらい、その後3週間、実際に宣言通りの行動に挑戦します。そして期間終了後に活動内容を写真やレポートで提出します。自由参加の企画にも関わらず、全158ユニット中119ものユニットが参加しました。

 

――どんな「宣言」がありましたか?

 

沖田さん:「売り場内のごみ箱を細分化して完璧な分別を目指します」や「マイボトルを持参して、公私ともにペットボトルを3週間購入しません」などさまざまでした。3週間後、特に熱量の高い活動をしたユニットの中から、「資源削減・再利用賞」「エコライフ賞」「ロングユース賞」の3部門でベストサステナ賞を各1ユニット選んで表彰したほか、グッドサステナ賞として25ユニットを選出しました。受賞ユニットは、2021年12月の全体朝礼で猿木店長から表彰を受けました。

バックヤードに貼り出された活動内容のリポートの一例

――ほかにも取り組み事例はありますか?

 

沖田さん:「HANKYU MENS SDGs LIVE」と称して、2021年9月から約1カ月、毎週土曜日の朝礼前の時間に、SDGsやエコマークなどの情報を、館内生放送で発信しました。プロジェクトメンバーがDJとなって、各売り場のディビジョンマネージャーをゲストに迎え、カジュアルなトークスタイルで進行するというものでした。取引先社員も知っているディビジョンマネージャーが登場するおかげで、興味を持って聞いてもらうことができました。そして配信の最終回には猿木店長も登場し、盛り上がりました。

 

さらに新しくSDGs朝礼を定番化しました。この「朝礼でSDGsについて啓蒙を」という考えは定着し、SDGs基礎知識〇×クイズやゴミ分別クイズなど、堅苦しくなく、楽しく学ぶことができる朝礼となっています。

楽しくSDGsを学ぶ朝礼での取り組み

猿木さん:環境に配慮した活動をお客様に知っていただくWEBサイトも2021年10月に公開しました。同じくエコマークを取得した阪急メンズ東京と共同で、HANKYU MEN'Sとしてのサステナブルな活動を発信する「HANKYU MEN'S WITH Good Harmony」で、「エコマーク認定店舗とは何か」や、両店の取り組みをお知らせしています。

エコマーク認定店としての取り組みを発信へ

――今後の計画を教えてください

 

猿木さん: 2022年度以降は、エコマーク認定店舗として発信力のある取り組みへの発展を目指しています。取引先とのコラボやお客様参加型のイベントなど、阪急メンズ大阪が主体となって実施する取り組みを拡大していきます。

 

――すでに実施した取り組みはありますか?

 

猿木さん:2022年6月に、ごみや漂流物を使ってさまざまな造形物を制作するアーティスト「淀川テクニック」と協力し、店内でのアート作品の展示と、漂着物を使った工作ワークショップを行いました。阪急メンズ大阪内で回収されたリサイクルできないハンガーで作ったアート作品は存在感があり、販売員がお客様とサステナビリティについて話すきっかけに。ワークショップには15組28名の親子連れのお客様にご参加いただけました。

©淀川テクニック、Courtesy of YUKARI ART

阪急メンズ大阪内で回収された、リサイクルできないハンガーで作ったアート作品「阪急メンズ大阪の鹿」

ワークショップの様子

――そのほかに予定している取り組みは?

 

猿木さん:2022年度は、これまで以上に「従業員全員参加」を目指しています。2021年に実施したマイサステナ宣言の第2回を10月に予定していて、前回は75%ほどの参加率でしたが、今年度は全ユニットに参加してもらうことが目標です。