関西スーパーマーケット販促企画チームのチームリーダー上坂裕之さん(左)と関西スーパー西郷店副店長の衣笠忠明さん

「とくとくと~く♪ とくし丸~♪」
軽快な音楽を流しながら走る軽トラックをご存じでしょうか。株式会社とくし丸(徳島市、新宮歩社長)が運営ノウハウを提供する移動スーパーで、エイチ・ツー・オー リテイリンググループでは株式会社関西スーパーマーケットが手掛けています。兵庫県伊丹市で関西スーパー「とくし丸」の1号車が走り始めてはや5年、2022年8月に23号車を数えるまでに成長しました。“快走”の理由は何なのでしょうか。担当者の声をお届けします。                             

(編集部)
 

食品・日用品を移動販売する「とくし丸」

「とくし丸」は、軽トラックで日常生活の食品や日用品を販売するサービスです。高齢で店舗へのご来店が難しい方のご自宅近辺や老人ホームなど、決まったコースを週1、2回、巡回訪問しています。関西スーパーマーケット営業推進室販促企画チームのリーダー、上坂(こうさか)裕之さんと関西スーパー西郷店(大阪府守口市)の副店長、衣笠忠明さんに「とくし丸」事業について聞きました。

関西スーパー「とくし丸」ホームページ

株式会社とくし丸ホームページ

2022年8月19日発表「とくし丸」23号車開業のお知らせリリース

 

――「とくし丸」名前の由来は?

 

上坂さん:ノウハウを提供してくださっている、株式会社とくし丸の担当者によると、創業地である「徳島」と、社会事業や公共の福祉に貢献する「篤志」の意味が込められているそうです。ご年配の方のお買い物支援はもちろん、巡回訪問による地域の見守りと防犯にも協力しています。

大阪・守口市内を走る関西スーパーの「とくし丸」号

――「とくし丸」事業を手掛けたきっかけは?

 

上坂さん:お客様からの1通の手紙がきっかけでした。「関西スーパーのファンだけど近くに店がない。トラックで売りに来てもらえないだろうか」と書かれていたのです。ご要望を実現したいと、社長直轄のプロジェクトチームが2016年に発足。注文配達や自前の訪問販売も検討したのですが、事業として成立させられるか――答えがでませんでした。

 

そんなとき、2012年に徳島市で誕生して急成長していた株式会社とくし丸のビジネスモデルが、関西スーパーマーケットの福谷耕治社長の目に留まったのです。

 

――「とくし丸」のビジネスモデルは?


上坂さん:関西スーパーマーケットが車1台につき契約金50万円と月3万円のノウハウ使用料を、とくし丸本部に支払います。取り扱う商品は、すべて関西スーパー店頭の商品です。1台の軽トラックに積むのは、生鮮食品を含め約400品目、商品点数にするとなんと約1200~1400点になります。

所狭しと積まれた商品はなんと約400品目、1200点以上!

――関西スーパーの社員が販売するのですか?


上坂さん:お客様に届けるのは個人事業主の「販売パートナー」さんです。販売パートナーは約350万円で車を購入し、関西スーパーの商品を販売します。「とくし丸」で扱う商品の価格は、店舗で販売している価格に10円を上乗せしています。関西スーパーマーケットと販売パートナーは商品の粗利益と手数料を分け合っており、販売パートナーは「販売を代行」している形です。残った商品は店舗に返品でき、店舗側はそれらの商品を値引きして販売することができます。 

 

――すぐに軌道にのりましたか?


上坂さん:2017年1月末、待ちに待った関西スーパー「とくし丸」1号車が伊丹中央店(兵庫県伊丹市)から出発しましたが、その後は順風満帆ではなかったです。販売パートナー探しに最も苦労し、2号車の出発までに半年もかかったほど。求人サイトにも頻繁に募集を掲載しました。

 

販売パートナーさんも、ビジネスとして成り立つのか疑心暗鬼だったと思います。店も協力し、懸命にローラーキャンペーンを実施しました。チラシを配布し、訪問アンケートでお客様のニーズを聞き、訪問ルートを組み立てていきました。「とくし丸」の導入が決定した店舗に対しても、事業の説明、販売パートナーの紹介を徹底しました。仕事の分担についても詳細な説明会を開きました。店と販売パートナー、相互に「メリットのある事業」だと十分理解しあったうえでスタートさせました。


――安全安心への取り組みは?


上坂さん:鮮度管理は関西スーパーマーケットの厳格な基準を厳守してもらっています。例えば「お刺身」は販売期限が決められているため、販売パートナーはお昼に商品の交換をしなければなりませんが、これはお客様からの信頼を得ることにつながっています。

 

関西スーパー担当者がバーコードをスキャンして商品管理

店舗にとっても頼りになる存在

――お店にとっての「とくし丸」の存在は?

 

衣笠さん:関西スーパー西郷店では、大阪・守口市南部をメインエリアとする「とくし丸」3号車が営業しています。西郷店の売り上げの約2パーセントを「とくし丸」が担っています。店としても大変ありがたく、頼りになる存在です。

関西スーパー西郷店

――お客様からの声は?


衣笠さん:3号車の販売パートナーである村山かおりさんは5年のキャリアがあり、2022年8月には、全国に1000台以上走る「とくし丸」号の中で、販売ランキング9位に入りました。店は村山さんとコミュニケーションを密に行い、新しく入荷する商品を理解していただき、季節のお薦め商品など売り込み商品の情報を共有しています。村山さんからは、お客様の反応や生の声を店に届けてもらっています。

 

「うちの家の近くにも来てほしい」という要望も店に届くようになり、村山さんには2021年から、守口市北部も回って販売していただくようになりました。

西郷店のエントランスに「とくし丸号」5周年! 感謝のポスターを掲出

「とくし丸」の将来性と課題

――5年間、順調でしたか?


上坂さん: 継続は力なり、ですね。そして誇りは販売パートナーの皆さんが「順調に走り続けてくださっている」ことです。1号車の出発から5年、23号車まで増える過程で、販売に苦労し、なかなか売り上げが伸びない車もありました。販売パートナーさんは、個人事業主なので「とくし丸号」の売り上げに生活がかかっています。何とか販売が上向くようにと、チラシの配布やローラーキャンペーンを実施しました。

 

販売ルートを随時、見直し、集合住宅での販売を強化するため、車の駐車許可申請が必要な場所での販売については、当社が申請を代行したこともあります。協力できることは惜しまず、販売のテコ入れを図ってきました。なぜなら、「とくし丸」事業の売り上げ向上は私たち側にも、大きなメリットがあるからです。

 

――「とくし丸」はまだまだ増えそうですか?


上坂さん: おかげさまで年5台のペースで順調に拡大してきました。2022年中に24号車の出発も予定しています。今後、関西スーパーの64店舗すべてで「とくし丸」を展開したいと考えています。

訪問先での販売風景

――課題と展望は?

 

上坂さん:関西スーパーの「とくし丸」事業は、大阪府、奈良県下では18エリアで展開していますが、おひざ元の兵庫県内で実施しているのは、伊丹市、川西市、神戸市須磨区、神戸市北区、三田市、宝塚市の6エリアにとどまっています。兵庫県内での販売エリア拡大を課題としています。

 

また、現在23人の販売パートナーの中で女性は5人しかいません。こまやかな接客が得意な方が多い女性の販売パートナーをさらに増やしたいと考えています。