「H2Oほいくえん川西」の前で、エイチ・ツー・オー リテイリング事業推進室の中島吉浩さん(右)と同・西山威(たけし)さん

エイチ・ツー・オー リテイリングが手がけている企業主導型保育事業「H2O ほいくえん」が、1 号園のオープンから 5 周年を迎えました。
グループの食品スーパー、イズミヤ、阪急オアシスに併設された施設で、グループ従業員だけでなく、テナントやお取引先企業の従業員、さらには地域の子どもたちも受け入れている保育園です。保育事業の担当者の声をお届けします。 

(編集部)

きっかけは店舗の建て替え

「H2O ほいくえん」は現在、3カ所にあります。「デイリーカナートイズミヤあびこ店」(大阪市住吉区)、「カナートモール和泉府中」(大阪府泉大津市)、「オアシスタウン キセラ川西」(兵庫県川西市)にそれぞれ併設され、運営は保育専門のライクキッズ株式会社(東京都渋谷区)に委託しています。保育事業を始めたいきさつや3施設の特色について、エイチ・ツー・オー リテイリング事業推進室の中島吉浩さんと西山威(たけし)さんに聞きました。

「H2Oほいくえん和泉府中」の外観

<H2Oほいくえん>

 

●あびこ

住所

大阪市住吉区我孫子東2丁目5番15号
(大阪メトロ御堂筋線 あびこ駅 徒歩4分)

電話

06-4703-3672

定員

19名

面積

259.17平方メートル

 

●和泉府中

住所

大阪府泉大津市東豊中町1丁目5番10号
(JR阪和線 和泉府中駅 徒歩7分)

電話

0725-58-7883

定員

19名

面積

157.24平方メートル

 

●川西

住所

兵庫県川西市火打1丁目16番6号
(能勢電鉄妙見線 絹延橋駅 徒歩6分)

電話

072-744-0688

定員

19名

面積

238.18平方メートル

――企業主導型保育事業とは?

 

中島さん:2016年に、待機児童問題を少しでも解決しようと、内閣府主導で設置された制度です。保育園を企業が単独で設置したり、複数企業が共同で設置したりすることが可能で、一定条件を満たせば設置と運営の費用に対して国から補助金が支給されます。

 

西山さん:利用する曜日や時間帯、日数、時間数などを柔軟に設定できることも特徴です。「H2Oほいくえん」では、土日祝を含め原則毎日開園し、短時間や週2日だけといった預け方にも対応しています。保護者の収入で保育料が決まる認可保育所と比べると、政府補助のおかげで保育料は安く設定しています。月の利用時間ごとに料金設定があるので気軽にご利用いただけます。

――そもそもなぜ保育事業を手がけることに?

 

中島さん:デイリーカナートイズミヤあびこ店を、老朽化に伴って建て替えることになったのがきっかけでした。2018年に建て替えオープンしたお店ですが、2016年にスタートした社内のプロジェクトチームでは、「単に建物を新しくするだけでなく、地域の方へ社会貢献ができる施設にしたい」の声があり、模索しました。

2018年1月建て替えオープン当時のデイリーカナートイズミヤあびこ店

西山さん:食品スーパーでの人材確保が難しくなっていた状況も重なりました。安心して子どもを預けられる場所を整えれば、人材の確保につながります。加えて、企業主導型保育事業であれば、取引先企業や地域の子どもたちを受け入れることができ、待機児童の解消にも貢献できる――と考えました。

 

――期待通りパート社員は集まりましたか?


中島さん:はい、効果がありました。「H2Oほいくえん」は、2018年1月の「あびこ」開園に続いて2019年4月に「和泉府中」、同年7月に「川西」をオープンしましたが、イズミヤ、阪急オアシスのスーパーで働くパート社員の募集には、育児中の若いママさんが相当数応募してくださいました。育児休職中の方の復職もスムーズになり、「H2Oほいくえん」の効果は抜群でした。

食品スーパーの食材で手作り給食も

――受け入れの年齢や定員は?


西山さん:3施設とも、定員は生後6カ月~2歳児の19名です。小規模だからこそ、アットホームな雰囲気の中、先生方が子どもたち一人ひとりに丁寧に向き合って成長をサポートしてくれています。

「H2Oほいくえんあびこ」室内あそびの様子

――毎日どんな風に過ごしていますか?


中島さん:子どもたちは、室内では絵本の読み聞かせやブロックあそびなどをしています。園庭はありませんが、毎日近所の公園にお散歩に出かけるなどして、四季を感じながら過ごしています。例えば「あびこ」では、大聖観音寺(あびこ観音)に行ったり、「川西」では、近くを走る能勢電鉄の電車を眺めに出かけたり。虫捕りや季節の花に触れるなどの自然あそびを行っています。プランターでミニトマトなどの野菜を育て、食育も取り入れています。

 

西山さん:「オアシスタウン キセラ川西」や「カナートモール和泉府中」のイベントや、地域の催しにも積極的に参加し、地元の方々との触れ合いを大事にしています。

お散歩の途中、大好きな能勢電鉄を眺める「H2Oほいくえん川西」の園児

――給食は園で調理しているのですか?


西山さん:はい、栄養士や調理士の資格を持つ職員が自園で調理しています。隣接しているデイリーカナートイズミヤと阪急オアシスの食材を使っていて、「新鮮で安心」と保護者の方からも好評です。もちろん、おやつも手作りで、子どもたちに大人気です。
 

幼児用メニューの一例:うさぎとかめおにぎり、鶏の唐揚げ、マカロニナポリタン、キャベツと人参、ポテトサラダ、コーンポタージュ、フルーツゼリー

――「H2Oほいくえん」のほかの特徴は?


中島さん:3施設とも、デイリーカナートイズミヤ、阪急オアシスが隣接しているので、買い物に立ち寄りやすいということが大きな特徴です。子どもを預けている利用者はもちろん、保育園職員にとってもメリットで、「帰りに買い物を済ませられるのでとても便利」との声をいただいています。

 

「地域貢献」の意味合いがさらに強く

――苦労したことや変化してきたことは?


中島さん:補助を受けるための行政の手続きは大変です。法改正を正しく把握して対応することも簡単ではありません。開園当時0歳で入所したグループ従業員の子どもたちはすくすく成長して卒園し、年を経るごとにグループ従業員の子どもの数は減ってきました。反対に、地域の子どもたちと共同利用契約を交わした企業の従業員の子どもも受け入れが増えていて、「地域貢献」の意味合いが強まってきました。

 

――職員や利用者からはどのような声がありますか?

 

西山さん:職員からは、「設備が新しく雰囲気がアットホームなのでとても働きやすい」とよく耳にします。施設の警備員が常駐されているため、見守られている安心感があるとのことです。利用者にとっても心配なくお子さんを預けていただけますね。

保育園と職場が近い方からは、「お散歩に来たわが子の姿を見ることができ、仕事にやる気がでる」というお声もいただきます。

 

――今後の予定や抱負を教えてください


中島さん:現状ではH2Oほいくえんの新規開園の予定はありません。政府が掲げた「11万人分の保育の受け皿を確保する」との目標は達成されているため、国が新しい企業主導型保育園の募集を停止しているからです。

グループ内での利用促進と、共同利用契約の締結先を増やすなどして、3園の安定経営に努めます。これからもグループ従業員や地域の子どもたちの笑顔を守っていきたいです。