(左から)エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 経営政策部長 梶山智宏さん、株式会社阪急阪神百貨店 阪急本店 メディアデザイン部 ディビジョンマネージャー 永尾元道さん

エイチ・ツー・オー(H2O) リテイリングと阪急阪神百貨店は、2022年9月に本社オフィスを移転しました。
8カ月以上がたち、両社の社員の働き方には少しずつ変化が出てきました。移転のねらいは? 働き方はどう変わったの? 新オフィスの移転に携わったプロジェクトメンバーの声をお届けします。

(編集部)

働き方改革の第一歩!

新型コロナウイルスの感染拡大以降、日本ではデジタル化が急速に進み、働き方が大きく変化しました。それにともない、生産性や社員の自律性の向上が課題となりました。そんな中でオフィス移転プロジェクトをどう推進してきたのか……メンバーの梶山智宏さん(H2Oリテイリング経営政策部長)と永尾元道さん(阪急阪神百貨店 阪急本店 メディアデザイン部 ディビジョンマネージャー)に聞きました。

 

2022年11月30日発表のニュースリリース

 

――オフィス移転のねらいを教えてください

 

梶山さん:働き方を改め、新しいサービスや価値の創造につなげたいと考えました。目指したのは、リモートワークやフリーアドレス制を生かして自律的に働ける、そして会社や部門を超えたコミュニケーションを生み出す環境を作ることです。

 

――いつごろから準備を?

 

梶山さん:2021年6月には部門をまたいだオフィス移転プロジェクトを立ち上げ、理想のオフィスを追求してきました。新しい価値を創造していくには、いろんな方の意見を聞き取り入れるのが重要です。約20人のプロジェクトメンバーは、部署やポジション、年齢もさまざまです。一方、コロナ禍で人々の生活スタイルは大きく変わりました。お客さまに新しい価値をご提供するには、まず働く我々が意識を変える必要があります。さらに、オフィスの設備や備品を共用化し使用面積を縮小すれば、費用削減にもつながります。

 

オフィス移転から半年が経過

――ご自身や周りの皆さんの働き方はどう変わりましたか?
 

永尾さん:個人の固定席を設けないフリーアドレス制や、部門を超えたコミュニケーションを促すコラボレーションスペース……新オフィスでは、多様な機能や配置の選択肢の中から自分で働く場所を自由に選ぶスタイル「ABW※」を導入し、より自律的に働けるようになりました。

 

※ABW:Activity Based Workingの略称

 

――具体的にいうと?

 

梶山さん:大画面モニター席や窓に面した執務席、チームでの業務や打ち合わせができる席、スタンディングテーブル、集中ソロワークスペース、ウェブ会議ボックスなどさまざまな機能のおかげで、集中したいときは1人で、相談したいときはチームで……という使い分けもできます。

作業がしやすいように大画面のモニターを設置したゾーン

窓際に配置されたカフェのような空間も

永尾さん:フリーアドレスによる景色や周囲のメンバーの変化によって、 他部門の方の頑張りや、個人の人となりが見えるようになったのも大きいです。オフィスはワンフロアで見通しもよく、部門を超えたコミュニケーションが取りやすくなりましたね。歩いたら誰かとすれ違うし、見かけたら声をかけ合います。毎日いろんな部門の人と顔を合わせて挨拶するって、仕事にも人間関係にもプラスですよ。偶発的なコミュニケーションが増えて、もやもやと一人で抱えていた悩みがすぐに解決するようになりました。

気軽に他部門のメンバーとのコミュニケーションが可能

――サステナビリティの面ではいかがですか?

 

梶山さん:会議や打ち合わせのスペースにはモニターを完備、複合機やキャビネットは最小限の台数とするなどペーパーレス化を徹底し、紙資源はリサイクルします。 ワンフロアで広いオフィスですが、こまめな消灯や時間帯によって使用エリアを制限するなど電力使用量を低減しています。また 、コラボレーションスペースのテーブルは、使うほどに馴染む大阪・泉州の森の間伐材を使いました。社員が体験学習から一連の工程に関わって作り上げました。テーブルでは、グループが取り組む「大阪 森の循環促進プロジェクト」を案内し、社員の関心や帰属意識を高めています。 

――DXによる効率化の面では?

永尾さん:クラウド経費精算サービスの導入や、電子決裁・契約の活用などのデジタル化によって出社・在席を強いる業務を削減しました。また、クラウドPBX(構内交換機)を導入して固定電話を廃止し、居場所にとらわれない働き方を推進しています。さらに、ノートパソコンやスマートフォンを徹底的に活用するための高速無線ネットワークや充電機能の整備、顔認証による入室、二次元バーコードを用いた無人受付、会議室のウェブ予約、座席へのチェックインと位置情報のマッピングなどITを活用したスマートな業務環境を構築しました。

事前登録し、顔認証で入室可能

現状の課題とこれからの働き方

――課題も見えてきましたか?

 

梶山さん:新オフィスは在籍者約660人に対して執務席約300席、2社で使用している梅田地区のオフィス面積を従来の3割縮小し、運営コストとエネルギー消費を削減できました。一方で、コロナ禍が一段落し、オフィス出社人数が増えたことから、日によっては執務席の不足や執務場所の固定化も見受けられます。

 


――今後の方向性を教えてください


永尾さん: オフィスに出社する目的や働き方を再確認し、リモートワークのさらなる活用や分散出社、フリーアドレスの推進など、従業員にはより自律的な働き方が求められます。自分自身で考え行動する習慣をさらに身につけ、新しい価値の創造につなげるために、ぜひこの環境を利用してほしいです。課題はあるものの、順調に新たな働き方が根付いているようです。コラボレーションスペースを活用してさまざまな社内イベントの開催に取り組んでおり、今後は部門だけでなく会社も超えてコミュニケーションを取り、新たな価値を「共創」していきたいですね。

コラボレーションスペース「うめラボ」では多彩なイベントを開催