(左から)一般財団法人H2Oサンタ事務局の森田英里さん、事務局長 外間孝次さん、梅田潔さん

H2Oサンタは、阪急うめだ本店を中心に「地域社会にチャリティーの文化を創造すること」を目的に活動する社会貢献団体です。2012年10月、阪急うめだ本店建て替えオープンを機に誕生し、2015年11月に一般財団法人を設立しました。子ども支援をテーマに、社会貢献団体と地域の方々とをつなぐ取り組みを継続し、2023年10月でまる11年を迎えます。従業員ボランティアの参加呼びかけや、野外イベントへの出展など、グループ内外に支援の輪を広げる担当者の思いをお届けします。


(編集部)

小売業ならではの強みを生かした活動

お客さまの中には、社会貢献に関心がありながら情報や機会があまりなく、「何をすればいいかわからない」という方がいらっしゃいます。一方、社会課題の解決を図る団体は、慢性的な資金や人手の不足に加え、苦難を強いられている子どもたちの存在や自分たちの活動内容を知ってもらう場が少ないことに悩みを抱えています。H2Oサンタは、グループ店舗の集客力や情報発信性を生かし、両者の思いやニーズをつなぐ架け橋の役割を担っています。H2Oサンタ歴11年目で事務局長の外間孝次さん、7年目の森田英里さん、2023年4月の異動でメンバー入りした梅田潔さんに聞きました。

――「H2Oサンタ」という名前の由来は?

 

外間さん:世界中の誰もが知り、みんなに幸せを届けるサンタクロースをイメージして名づけました。「誰もが誰かのサンタになれる」を合言葉に活動しています。

季節によって着替えるH2Oサンタのロゴ。(左から)冬服、合服、夏服

――具体的にどんな活動をしているのか教えてください

 

森田さん:有意義な活動をしているのにあまり知られていない団体のPRと寄付集めのお手伝いです。例えば、最大のイベントは、阪急うめだ本店9階祝祭広場で1年に2回開催する「H2Oサンタ NPOフェスティバル」です。団体ごとにブースを設けて、団体スタッフが直接お客さまに社会課題や活動内容を紹介しています。回を重ねるごとに、団体同士のつながりが広がっているのもうれしいですね。

ブースでは団体スタッフが一般の方と直接触れ合う貴重な機会に

外間さん: 毎週土曜日の午後には、祝祭広場の階段下ステージで団体の方へインタビューする「チャリティートークイベント」を行っています。お買い物の合間など、ふとしたきっかけで興味を持っていただける機会です。ある時、身体障がいのある方にマンツーマンで水泳指導を行う、認定NPO法人プール・ボランティアを紹介していました。すると、突然、男の子が階段からステージに降りてきたんです。何か伝えたいことがあるのかと思い話を聞くと、こう言いました。「僕は、補聴器を使っているので学校やスイミングスクールのプールには入れません。プール・ボランティアで水泳を習っていて、すごく楽しいです。東京の次のパラリンピックを目指します!」。 まったく予定外のできごとでしたが、その場は大きな拍手に包まれ、団体へのご理解とご寄付につながりました。

――グループ内での取り組みはほかにもありますか?

 

梅田さん:パネルで社会貢献団体を紹介する「H2Oサンタ チャリティーガイド」を阪急・阪神百貨店の5店舗に常設しています。百貨店だけでなく、食品スーパーの「イズミヤ」「阪急オアシス」「関西スーパー」でも一部常設しているほか、ほぼ全店舗で活動紹介の冊子と募金箱を設置しています。さらに、賞味期限が迫ったパンを近隣の子ども食堂などに役立てていただく活動もしています。

 

「H2Oサンタ チャリティーガイド」(左)、子ども食堂でパンを選ぶ子どもたち

人生を変えるきっかけに

――活動する上で大切にしているのは?

 

梅田さん:楽しくにぎにぎしい雰囲気の中でチャリティーに触れていただくことです。「H2Oサンタ NPOフェスティバル」や、毎年春と秋に出展する大阪府吹田市の野外イベント「ロハスフェスタ®万博」のコンセプトは、「たのしい、かんたん。チャリティーパーク」。クイズラリー形式でブースを回るNPOクイズやワークショップ、おもしろ募金箱など、どなたでも気軽にチャリティーに参加できるしかけをご用意しています。8月に開催したフェスティバルでも、老若男女問わずさまざまな世代の方に大勢ご参加いただきました。

コインのコースをカスタマイズできる「コロコロ募金箱」(左)、大人気のガラガラ抽選

森田さん:団体の方々との信頼関係も大事にしています。団体が来場者にどんな事を知ってほしくて、何を伝えたいのかを的確に理解しなければなりません。普段から活動の情報を共有したり、SNSなどでコミュニケーションを取ったりしています。

――今までで一番苦労したことは何ですか?


外間さん:「あぁ、そういうことに困っている子どもたちがいるんだ」という気づきと「応援したい」という共感を得られる団体探しです。今では全国的に広がりを見せる子ども食堂も、「チャリティーガイド」でご紹介を始めた10年前はほとんど知られていませんでした。社会課題は時代とともに変化していきます。まだ世の中に知られていない、“今の子どもたち”の問題解決に取り組む団体を見つけるため、普段からアンテナを張り巡らしています。他企業の社会貢献担当者や大学教授とのネットワークなども活用しています。

 

梅田さん:私は入ってまだ4カ月なのですが、これまでチャリティーには全く無縁でした。スタッフや団体の方にいろいろ教わって勉強しているところです。実は、子どもが苦手で接し方がわからず、初めてのイベントはとても緊張しました。ですが、触れ合ううちに今ではすっかり慣れ、子どもたちが笑顔で喜んでくれる姿を見て、とてもうれしく思います。自分自身が人間らしく変わったな、と感じます。

 

――逆にうれしかったことや印象的なエピソードは?


外間さん:ある時、「息子の人生を変えるきっかけを作ってくれて、ありがとう」と、手を合わせてお礼を言ってくださるお客さまがいました。以前引きこもりがちだった息子さんを阪急うめだ本店に連れだして来られた方でした。お買い物の間、息子さんには祝祭広場の大階段で待ってもらっていたそうです。その時たまたま開催していたトークイベントの内容が耳に入り、紹介していた団体に興味を持ってくださいました。なんと半年後にはその団体活動に参加するようになり、外出する機会も増えたそうです。お話を伺って、本当にうれしかったです。

 

森田さん:コロナ禍で活動を自粛していたとき、オンラインで初めて参加者の方とお話しする機会がありました。たまたま、私が担当する活動報告の冊子を手に取り、読者プレゼントに応募してくださった方でした。隅々まで読んでいただき、「H2Oサンタが紹介してくれる団体なら安心して寄付できる。ありがとう」とのお言葉をいただきました。今までの苦労が報われた気持ちになり、涙が出ました。

未来に向けた思い

――これまでの中で変化はありますか?


外間さん:グループ内外で、少しずつ支援の輪が広がってきています。2022年10月から、改めてグループ従業員向けにH2Oサンタの説明会をしているんです。これまでに70回、1200名を対象に実施したのですが、対面で伝えることで活動目的や内容が深く伝わっていることを感じます。阪急阪神百貨店ではボランティア休暇が制度化され、従業員ボランティアによるサポートが増えてきました。さらに、学校の出前授業など、外部からもお声がかかるようになってきました。

接客スキルを活かして従業員ボランティアが活躍

――今後の抱負をお願いします


森田さん:小売業というグループの業態を活用し、何かモノを販売することで社会貢献につなげたいと考えています。H2Oサンタのロゴがついている商品を買うと、「誰かのサンタになれる」というマインドが広がっていけば、最高です。

 

梅田さん:異動前の自分と同じように、チャリティーについてあまり興味がない方やよく知らない方はまだまだ多いと思います。そんな方々に向け、わかりやすく、「難しくとらえなくてもいい」と伝えたいです。経験を積み重ね、少しずつ成長できるように努力していきます。

 

外間さん:まずは、グループ従業員全員にH2Oサンタのことを深く理解してもらう活動を継続したいです。そしてそれぞれの地域で取り組みを広めてもらうことで、「地域社会にチャリティーの文化を創造する」というH2Oサンタの理念を実現できれば……と思います。グループ従業員の力を結集すれば、きっと叶うと信じています。

2023年8月2日~7日に開催した「第17回H2Oサンタ NPOフェスティバル」会場