(左から)阪神本店フード営業統括部フード催事部の宮辻佳宏(よしひろ)さん、鷺谷(さぎや)孝二さん、服部祐佳さん、佐藤陽介さん

2022年4月、阪神梅田本店は約7年半、2期に分けての建て替え工事を終え、グランドオープンしました。新しいストアコンセプトは「毎日が幸せになる百貨店」。「カジュアルで親しみやすい」「食の阪神」など今までの定評を大切にしながら、「毎日の幸せ」が見つかる店を目指しています。イベントを企画、運営するなかで心がけていることや手応えなど、担当者の声をお届けします。

(編集部)

            

2周年までの道のり

2021年10月、Ⅰ期棟にオープンした売り場のひとつが、1階の「食祭テラス」です。面積は約330平方メートル、天井まで約6メートルと開放的な大空間 。毎週、ある分野に精通した食のプロ「スーパープレゼンター」を招き、新しい食体験を提案しています。食祭テラス誕生のきっかけや手応え、今後の展望などを、担当する阪神本店フード営業統括部フード催事部の佐藤陽介さん、鷺谷(さぎや)孝二さん、宮辻佳宏(よしひろ)さん、服部祐佳さんにお聞きしました。

――食祭テラスが生まれた背景を教えてください


宮辻さん:建て替えにあたって、新本店を象徴する売り場を作ろうという話が持ち上がりました。私たちは 、いわゆるデパ地下だけではなく1階も食品フロアにして、「食の阪神」を全面に押し出そうと考えたのです。

 

佐藤さん:阪神百貨店には以前から、イベントなどを通してお客様と一緒に「お祭り感」を楽しもうとする文化がありました。だからこそ、「食」や「祭り」というキーワードがなじみやすかったのかもしれませんね。

 

――立ち上げの際は、苦労も多かったのでは?

鷺谷さん:社内外を問わず、いろんな人々が集まって一つの売り場を成立させるのは、やはり簡単ではないですね。私は長く催事の運営に携わってきて、業務の進め方にさまざまな課題や反省を感じていました。企画チームと運営チームが担当の垣根を越えて皆でフォローし合える体制作りには、その経験が大いに生かされましたよ。

 

宮辻さん:最初は売り場も前例もなかったので、出店交渉は手探りでした。ただ、「新しい食体験を提案する」というコンセプトを丁寧に説明すると、共感してくださる方々ばかりだったんです。そこから、「阪神が面白いことをするなら」、「●●さんが出ているなら一緒にしたい」と、徐々に人の輪が広がりました。すべてのイベントは「人」から始まるので、企画も運営も「人」を大事にしています。
 

2021年10月グランドオープン時の「食祭テラス」

人と人のつながりが共感のカギ

――スーパープレゼンターも、まさに人を重視した考えですね


宮辻さん:毎週思い付くがまま企画を続けても、核心が見えてこないですよね。方向性を定めようと設けたテーマが、人だったのです。

 

佐藤さん:同じ唐揚げでも「阪神百貨店が選びました」より、「唐揚げ協会の会長が日本全国を回って選んだベスト10です」と聞く方が、食べ比べてみたくなりませんか?

 

服部さん:担当者は商品やカテゴリーにそこまで詳しくなくていい、と私は思っています。スーパープレゼンターと呼ぶ、その道に精通した皆さんがいるからこそ、私たちはお客様に共感していただけるイベントができます。

2021年11月に開催した「阪神からあげファン感謝祭@食祭テラス」の様子

――では、「食祭テラス」の皆さんの役割は?


佐藤さん:お取引先同士をつなぐのも、すごく大事な仕事です。「また次も会おうね」「来年はコラボしようよ」という風に、自然に話を進めてくださるといいですよね。「食祭テラス」を通じて、皆さんと業界を盛り上げていきたいです。
そして、「前に楽しかったイベントが、もっとバージョンアップしている!」とお客様に伝われば、売り上げにもつながります。 

 

服部さん:もちろん、お客様が喜んでくださるのが一番うれしいです。ただ、皆さんにご協力いただいて一つの催事を作るなかで、これまで接点のなかった、東京と大阪の店がすごく仲良くなることもあります。私たちの橋渡しで店同士のつながりができると、ジーンときますね。

 

鷺谷さん:お客様に安全に楽しんでいただけるよう、運営体制を整えるのも重要な役割です。早めに対応できるよう、日ごろから確認しています。また、「阪神さんなら」と百貨店に初めて出店してくださるお取引先もいらっしゃいます。気持ちよく帰っていただけるよう、丁寧なフォローも欠かせません。

2023年6月に開催した「GOOD COFFEE FEST」。イベントを通じ、たくさんのつながりが生まれました

誰もしていないことに挑戦する

――改めて、2年間の道のりを振り返るといかがでしょう?


宮辻さん:何もない更地(さらち)から始まって、1週ごと、企画ごとに振り返りを続けてきました。鷺谷さんが中心になって、「この企画はここがよかった」とか、「ここはダメだった」とか、ざっくばらんに意見を出し合っています。それぞれのいいところをまねをして積極的に取り入れて、皆で「食祭テラス」を磨き上げてきました。

 

鷺谷さん:お客様目線で感じたことをいつもみんなと共有しています。最近は、SNSをご覧になってご来店くださるお客様が増えたなと肌で感じていますね。インスタグラム(@ hanshin_1ffoodevent)で発信を続けて、今では3.1万人の方々にフォローしていただいています。

 

佐藤さん:お客様からは「楽しみにしてます」などのコメントもたくさんいただいて、双方向のやり取りが多いですね。

 

服部さん:以前、「食祭テラスって、催事場じゃなくて情報発信メディアだよね」というお言葉をいただいて、胸がいっぱいになりました。私たちは食の文化や情報を発信するコミュニティーの形成も目指していて、お客様にもその思いが伝わっていると実感しました。


――今後、取り組みたいことは?


鷺谷さん:社内から見て、もっといろんな人が行きたい、働きたいと思う売り場にしたいですね。裁量もやりがいもあって楽しいですよ。「あそこで働いてみたいな」って思う人がいっぱいできたら、すごくありがたいです。

 

宮辻さん:やっぱり、ブレずに続けるのがすごく大事。そのうえで、「その角度で来たか!」となるような新しい企画や見せ方を、みんなで考えてやっていきたいです。

 

服部さん:毎週いろんな切り口で開催していますが、国外の方に向けたイベントはまだできていません。海外からもお客様を呼べるようなプロモーションをしてみたいです。

 

佐藤さん:「誰もやっていないことをしたいよね」と、メンバーとよく話しているんです。「食」をテーマに、もっと広く、深くカテゴリーを広げていきたいですね。
 

(右上から時計回りに)2022年6月に開催した「GOOD COFFEE FEST」の様子、オープン前の食祭テラス、イベントに向けた商談の様子、2021年11月に開催した「#本日のおべんとう」の様子