阪急本店 OMO販売推進部 山下達也さん
阪急うめだ本店では、店の考え方や姿勢をお客さまや従業員、お取引先さまにお伝えするためにストアメッセージを作り、ビジュアル化し、広告として発信するキャンペーンを行っています。
2022年から続いているストアメッセージが「WITH Good Harmony」。
”人と人、人と自然、人と社会の調和から生まれる新しい幸せを発信し、未来を元気で豊かなものにしていきたい”という阪急うめだ本店の想いを表現した言葉です。
この言葉の本質がより伝わるようにと奮闘したのが、阪急うめだ本店 OMO販売推進部の山下達也さん。阪急うめだ本店のストアプロモーションを担当しています。山下さんがどのような想いを持って、このキャンペーンに取り組んだのか語ってもらいました。(編集部)
「WITH Good Harmony」という言葉は変わらなくても、時代の空気や価値観の変化に合わせて毎年お客さまに伝えたいことは変わっていきます。
コロナ禍だった2022年は身近な人や地域とつながり、寄り添う優しさを。2023年は一人ひとりが行動を起こす大切さを。そして今年は、さまざまな個性を持った人々が輝ける元気で豊かな未来、それを目指すんだという決意のようなものを、もっと力強く伝えたいと思いました。
阪急うめだ本店は「楽しさ世界NO.1百貨店」をストアビジョンとしています。誰もが輝ける未来を、難しくならず楽しくお客さまにお伝えするにはどうしたらいいか。それが、今回の悩みどころでした。
そこで、以前からお付き合いのあった株式会社ヘラルボニーにご相談したんです。ヘラルボニーさんは、知的障がいのあるアーティストたちとライセンス契約を結び、ビジネスを展開している会社です。
彼らは障がいのある方をパートナーとして、福祉ではなくあくまでもビジネスをやろうとしている。事業を通じて障がいに対する認識を変えようとチャレンジしている彼らなら、私たちが目指す多様な個性を持った人が輝ける未来を、解像度高く表現してくれるんじゃないかと思いました。
ストアメッセージのプレゼンテーションを聞いて、ヘラルボニーさんが示してくれた世界の豊かさに、とても感動したことを覚えています。泣いているメンバーもいたぐらい、心に刺さりました。
ヘラルボニーさんの力を借りてできたのが、このキービジュアルです。
「世界に、あそび心を」というキャッチコピーのとおり、ヘラルボニーの作家・笹山勝実さんの描かれる色とりどりの線が伸び伸びと枠の外にはみ出し、どこか優しく、おおらかな「ゆとり」が感じられて、こんな世の中になったらいいなという私たちの想いを表現していただいたと思っています。
実は、このキービジュアルには「ヘラルボニー」という名前は一切入っていません。先入観なしでストアメッセージを感じてほしいという気持ちがあったので、黒子に徹していただくようにヘラルボニーさんにお願いしました。今までそんな依頼はなかったようで、彼らも面白がってやってくれました。
ヘラルボニーの名前がなくても、「今年のストアメッセージいいね」と、たくさんの人に声をかけてもらっています。何年もストアメッセージを作ってきましたが、こんなことは初めてです。
改めて、ヘラルボニーさんの「想いを伝える力」の凄さを感じています。
さらに、今年は従業員にメッセージを体感してもらえる取り組みにも初めて挑戦しました。お客さまにストアメッセージを伝えるのは、ビジュアルだけではありません。従業員たちが、「あそび心」を体感して、少し心に余裕を持った状態でお客さまと接する。そんな積み重ねでも、私たちのメッセージは伝わっていくと思っています。
そこで、お客さまの目に触れない従業員施設の壁に、「〇〇を楽しむ」というコピーに合わせたアートを設置しました。また、従業員食堂の近くには、自分が発揮した「今日のあそび心」を色で表すような仕掛けも作りました。みんな、思った以上に楽しんでくれていますね。こちらが仕掛けた以上に、思い思いに「あそび心」を発揮してくれています。
バックヤードでの取り組みの様子を説明する山下さん
今回、ヘラルボニーさんと一緒にストア広告を形にできたことは、さまざまな個性を持つ人が輝ける社会とはどのようなものかについて考えるうえで本当に良かったと思います。以前、阪急うめだ本店で開催したヘラルボニーの展覧会で、知的障がいのお子さまをお持ちのお客さまが、「知的障がいは不幸というイメージが変わればいい。こどもの才能を何か見つけられたら」とおっしゃっていて、ヘラルボニーの事業が障がいのある方や、支える方々の希望になっていると感じたことがありました。私たちも日々の事業や取り組みを通して、多彩な個性をもった人が当たり前に活躍できる豊かな未来へ向かって何ができるのか模索し、その一翼を担っていきたいと思います
※この内容は、従業員向けコミュニティーイベント「うめラボフライデー」での講演内容を、加筆・再編集しなおしたものです。
「うめラボフライデー」当日の様子