阪急本店 OMO販売推進部 矢部玲子さん(写真右)と、阪神本店 OMO販売推進部 石田佳弘さん
「楽しく遊んで、学んで、体験する」をコンセプトに、阪急阪神百貨店がおしごと体験やモノづくり体験を提供する「HANKYU こどもカレッジ」、略して「こどカレ」は、2019年に阪急本店で始まりました。回を追うごとに企画数・参加人数が増え、店内放送体験などの名物企画も誕生し、阪急本店の2021年度と2022年度のプログラムは、2年連続で文部科学省主催の「青少年の体験活動推進企業表彰」で審査委員会優秀賞を受賞しています。2023年には「HANKYU HANSHIN こどもカレッジ」として阪神梅田本店でも開催し、さらに2024年、阪急・阪神両本店を中心に百貨店8店舗に広がりました。参加者からも、実施した売り場からも大好評である「こどカレ」、その企画の担当者の声をお届けします。
(編集部)
H2Oリテイリンググループは、同社のサステナビリティ経営方針において、重点テーマの 1 つに「地域の『子どもたち』を育む」を掲げています。その実現を目指して推進する、次世代を担う地域の子どもたちの健やかな成長(未来)を応援する取り組みの一つが「こどカレ」です。
スタートしてから6年間の振り返りや今後の展開予定を、両本店で企画を推進する阪急本店OMO販売推進部の矢部玲子さんと、阪神本店OMO販売推進部の石田佳弘さんに話を聞きました。
「うめラボフライデー」当日の様子
――こどカレを始めたきっかけを教えてください
矢部さん:子どもと一緒に楽しめて、お子様連れでも気兼ねなく百貨店に来店できる企画を実現したいという思いが始まりでした。当時、私自身、娘が3歳で、「子連れで百貨店に行くのは、ハードルが高い」と思う気持ちがありました。「泣いたら、飽きたら、どうしよう」と不安がたくさん。それでも子どもと一緒にお出かけしたいという思いは、子育て世代のママ共通だと思います。
子どもが楽しめるイベントは来店のきっかけになり、きっと素敵な家族の思い出にもなると思います。子どもの頃、家族でデパートに行ってご飯を食べた、屋上遊園地で遊んだ、ハレのお洋服を買ってもらった。そうした温かな思い出のひとつに「こどカレ」がいたらいいな、と思ったのが企画のきっかけです。
――2019年から計5回開催してきました。どのように成長してきましたか?
矢部さん:初開催の2019年の夏休みは、全館で子ども関連のイベントをすること自体が初めてで、どれくらいの規模でできるか未知数でした。しかし、蓋を開けてみると子ども服のフロア以外でもたくさん企画が出てきて驚きました。
2020年はコロナ禍で開催を見送り、2回目の開催となったのは2021年。今も使用しているロゴが完成したのがこの年です。スケール(ものさし)と方眼紙をモチーフに取り入れ、「子どもたちが夢を描く」イメージを表現しました。今や名物となっている子どもたちによる店内放送もこの年からスタートしました。
翌2022年は、「こどカレチャレンジャーズ」(今年もメインビジュアルに使用したキャラクターたち)が初登場した年です。鉛筆やパレット、虫取り網を持った子など、子どもたちの得意分野や個性をイラストで表現しています。「こどカレ」に来て、楽しいこと・夢に出会ってチャレンジしていく、その好奇心があふれたビジュアルです。
石田さん:私はこの年から現部署(阪神梅田本店)へ配属となり、「阪急がうらやましい!」「阪神でもやりたい!」と、思いを募らせていました(笑)
矢部さん:石田さんの思いが実を結び(笑)、2023年には初めて阪急本店と阪神梅田本店の両店で実施できました。コロナ禍もあけ、ひさしぶりに各種制限のない夏休みで、参加者も大幅に増えました。
石田さん:阪神梅田本店での開催は初めてでしたが、多くのお取引先さまや売り場の方が協力してくださり、当初目標の倍以上の92メニューを提供できました。皆さんの「子どもたちのためにいろいろ企画したい」思いが実は強かったのだと、やってみて分かりました。
矢部さん:そして今年、2024年は参加した8店舗※で連携した取り組みを行い、合計で640の企画を実施、3万人を超える方にお楽しみいただけました。
※阪急本店、千里阪急、高槻阪急スクエア、川西阪急、西宮阪急、神戸阪急、博多阪急、阪神梅田本店
阪神梅田本店で 2024 年に開催した「料理人 中東篤志直伝 目指せ!包丁マスター」の様子
――参加店舗8店舗が連携した取り組みはどういったものですか?
矢部さん:3つの取り組みを連携して行いました。
ひとつ目は「ブランディング」。ロゴとキャラクターを全店で共通化し、こどカレの認知促進と各店への愛着づくりを図りました。
ふたつ目は「情報連携」。阪急本店のこどカレ特設サイトをハブとして、各店のこどカレ詳細ページへのリンクを貼り付け、さまざまなお店で「こどカレ」を開催していることを周知しました。
3つ目が「課題の抽出と共有」で、全店共通の参加者アンケ―トを実施しました。課題を抽出・共有し、さらなる発展のために活用しています。
参加した各店からは、複数店舗でやるからこそ訴求力が高まったという声が上がっています。「〇〇(店名)でも開催してるんですよ!」などお客様との会話のきっかけにもなったそうです。また、今回が初年度だったということもあり、「次はこういうことがしてみたい!」「こういう企画はどうかな?」という声が早くも各店から出てきています。
石田さん:関西の7店舗では、パスポートに書かれたヒントを手掛かりに、阪急・阪神百貨店に隠されたスタンプを見つけ出すスタンプラリー「HANKYU HANSHIN こどもカレッジ サマーパスポート」も実施しました。7店舗全てのスタンプを集める方もいて、「謎解き感覚で楽しめる」と好評でした。
サマーパスポートの表紙(左)と、中面の一部
矢部さん:阪急本店と阪神梅田本店の2店舗での取り組みも実施しました。「名物もんづくり」としてカレーに注目。「学んで食べよう こどカレー」をキャッチコピーに、両店のレストランや食品売り場を巻き込んでカレーメニューをクローズアップしました。
石田さん:レストランでも「こどカレ」を展開できないか、そして1日中「こどカレ」を楽しんでもらえないか、を考えていたのですが、矢部さんが急に「カレーでできませんか」と提案してくれて。前日まで全然違う方向で検討していたのに(笑)
矢部さん:仕事の休憩中にカレーの匂いがして、急に思いついたんです。これだ、と思いましたね(笑)
石田さん:子どもから大人まで人気のメニューですし、レストランも参加しやすい。食品メーカーさまにもご協力いただき、カレーの歴史が楽しく学べるパネルまで展示するなど、当初の想定よりも広く展開できました。
――子どもたちの未来を育む「こどカレ」を、今後どう育てていきますか?
矢部さん:例えば、ゲストで参加するだけでなく、イベントを一緒につくるなど子どもたちにキャスト側にもなってもらう企画もやってみたいです。「『こどカレ』行った?」と話題にしてもらえるように、常に楽しいことを探すアンテナを立て続けています。
また、店舗横断企画のパワーアップもしたいですし、子どもたちの学びのエンタメパークとして注目される存在に成長していきたいです。
毎年、開催期間の夏が終わったときから、何なら開催中から担当者の間では「来年はこんなことしたいね」と話しています。
「こどカレ」の楽しさは夏休みだけではないので、常に情報を発信し続けていきたいと思っています!
石田さん:2024年は8店舗連携の取り組みという大きな1歩が踏み出せましたが、だからこその課題も見つかりました。より分かりやすい情報提供の方法は? もっと喜んでいただける連携施策は? などキリがありません。解決に向けて、複数の店舗が関わるからこその難しさがありますが、同時に心強さも感じます。これからも各店で携わるメンバー一丸となって、お客さまにより喜んでいただける企画にしていきます。
また阪神梅田本店の担当者としては、”阪神らしさ”をより一層追求します。2024年は阪神梅田本店にとって「こどカレ」は2年目で、昨年の反省を生かしてより楽しんでいただける内容に進化させ、参加者数も増やすことができました。しかし他の店舗を見れば、参考になる点や真似したい点がたくさんあります。すでに構想は膨らんでいますので、来年に向けて楽しみで仕方ありません。
阪急うめだ本店で2024年に開催した、楽しく学べる野菜クイズと手作り野菜ソース体験の様子