(左から)株式会社エイチ・ツー・オー商業開発 フードトラック部 小西さん、大石さん、田島さん
ショッピングセンターは今、来館目的の多様化やオンライン消費の拡大により、求められる役割、そのあり方が、大きな転換期を迎えています。かつての店舗を構えて「お客さまを待つ」スタイルから一歩踏み出し、「自分たちからお客さまのもとへ会いに行く」――。そんな挑戦を進めるのが、エイチ・ツー・オー商業開発が手がけるフードトラック事業です。
2022年度にわずか1台の車両から始まり、2025年度には車両7台、延べ出店日数950日に拡大。さらに大阪・関西万博という世界的な舞台で約22万食を提供するまでに成長しました。今回は、フードトラック部の田島さん、小西さん、大石さんの3名に、ゼロからの試行錯誤、大阪・関西万博での怒涛の日々、そして地域と共に描く未来のビジョンについてお聞きしました。
(編集部)
フードトラック出店の様子
――まずは、フードトラック事業が始まった経緯を教えてください。
田島さん: きっかけはコロナ禍でした。実店舗にお客さまが来られない状況が続き、「どうすればいいのか」という問いに対し、当社社長の今井が出した答えが「こちらから出向こう」というものでした。また、社員の年齢層が高くなる中で、ベテラン社員の豊富な経験と意欲を、どう新しい価値に変えていくかという「人材活用」の側面からも、新しい事業の開発が必要でした
――立ち上げメンバーは、もともと食のプロだったのでしょうか?
大石さん:いえ、それが全くの素人だったんです。2022年のスタート時、担当者はわずか3名。小西は当時、催事部で食カテゴリーともつながりがありましたが、食の専門家というわけではありませんでした。そして私ともう一名の立ち上げメンバーは、衣料品や住居関連の出身でした。
小西さん:最初は本当に手探りでした。仕入れルートさえ確立されていなかったので、食品スーパーでパンを買ってきてホットドッグを作ることから始めました。社内で何度も試食会を開いて、「これならいける」と確信を持てるメニューを模索しました。はじめての営業は当社直営のSCでしたが、一般のお客さまよりも関係者が買ってくれているような状態からのスタートでしたね。
――2025年の大阪・関西万博への出店は、事業にとって大きな転機になったとお聞きしました。
田島さん: はい。社内活性化と、事業としての信用力向上を目指して応募しました。実は、万博への出店をかけた1回目の公募では落選してしまったんです。当時はまだ車両も少なく、公募の条件に合わなかった。でも「どうしても諦められない」と、その後の2次募集に向けてプランを徹底的に練り直しました。
小西さん: 2次募集では、私たちの強みである「地域連携」を前面に押し出しました。大阪産の食材を使ったメニューや、リユース食器の活用など、環境や地域課題へのアプローチを強化しました。結果として、応募した9事業者の中で最も高い評価をいただき、採用を勝ち取ることができました。
――大阪・関西万博での184日間はいかがでしたか?
大石さん: 想像を絶する過酷さと、それを上回る喜びの連続でした。特に7月後半からの猛暑期は、35度を超える屋外での営業。想定を上回る来場者数で、1日の食数が読めず、毎日がトライ&エラーの連続でした。でも、多いときには1日2,000人以上のお客さまが並んでくださる。その行列を見たときは、純粋に「楽しい、もっと喜んでもらいたい」という前向きな気持ちになれました。
田島さん: それまでの100倍の営業規模(お客様の数)、かつ、はじめての長期間にわたる出店で、困難もたくさんありましたが、最終的には2台のトラックで合計22万食を提供しました。本部やSC店舗からの応援スタッフを含め、まさに「全員参加」で駆け抜けた184日間。この経験が、「万博でできたのだから、どんな大きなイベントでも大丈夫だ」という、チーム全員の強い自信につながりました。
万博での出店の様子
――メニュー開発において大切にしていることは何でしょうか。
小西さん:私たちは単にお腹を満たすだけでなく、地域の想いも一緒に届けたいと考えています。万博でも「大阪もん」の認証を受けた「なにわ黒牛」の牛丼や、オリジナルの「多国籍たこ焼きロール」などを提供しました。また、愛媛県との連携では、地域の特産品を積んだ移動販売車でSCを回り、お客さまに大変喜んでいただけました。
田島さん:最近では、地域の方々から「うちのイベントにも出店してほしい」「この地元の食材を使って何かできないか」というお声を直接いただけるようになってきました。フードトラックがただの販売車ではなく、地域コミュニティの「ハブ」になりつつあることを実感しています。これからも地域になくてはならない存在となれるように引き続き頑張りたいと思います。
――今後の展望について教えてください。
田島さん:万博での経験を「レガシー」として継承し、さらに大きな舞台へ挑戦したいと考えています。最近では宝塚歌劇団との協業で、組カラーをイメージしたドリンクの開発なども行いました。今後は、大型音楽フェスやスポーツスタジアムなど、多くの人が集まる場所へ積極的に出店していきたいです。
小西さん:ゆくゆくは自分たちの出店だけでなく、他のフードトラック事業者と連携したイベントの企画運営なども手がけ、この事業の幅を広げていきたいと考えています。
大石さん:私たちの原点は、お客さまのもとへ「会いに行く」ことです。そうして店舗の外でも地域との接点をつないでいきます。これからもトラックのハンドルを握り、美味しい食事と笑顔を届けに、関西を中心に走り続けたいと思います。
宝塚歌劇団との協業で、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)に出店した際の様子


