株式会社阪急阪神百貨店 人事室 労務・ダイバーシティ推進部 高安夕貴さん
エイチ・ツー・オー リテイリングでは社会貢献意識の醸成や多様な価値観の育成を目指し、阪急阪神百貨店からスタートした「ボランティア休暇制度」。2026年現在では、エイチ・ツー・オー リテイリングやエイチ・ツー・オー商業開発でも導入されています。社員のボランティア参加を対象に年1日の有給休暇が付与される本制度は、導入から4年目を迎え、利用する社員が年々増加しています。
なぜ、ボランティア休暇という制度を始めたのか、また制度の運用や社内浸透に向けた取り組みはどのように進んでいるのか、本制度を担当する人事室の高安さんにお聞きしました。
(編集部)
――ボランティア休暇制度の概要と、制度導入の経緯を教えてください。
高安さん:ボランティア休暇制度は、社員の社会貢献に対する理解の促進と意識醸成、そして多様な価値観を持つ人材の育成を目的として2022年4月に導入されました。阪急阪神百貨店の全社員が有給休暇として年に1日取得が可能で、国内での社会貢献を目的とする無償の活動が対象です。普段とは異なる環境で多様な人や考え方に触れる経験をすることで、相手の立場や想いを尊重できる人材を育み、それを本業へ還元することもねらいの一つです。
休暇導入前の議論では「付与日数をさらに多くする」「勤務時間内に組み込む」といった案もありましたが、日数の多さや参加の義務化よりも、まずは1人でも多くの社員が主体的に取得することが重要であると捉え、現在の形になりました。制度が導入されて4年目となり、多くの社員が学びを得ている一方で、参加に踏み切れない方もいます。ボランティアと聞くと、「誰かのために頑張らないといけない」というイメージを持つ方も多いですが、実際の参加者は、「参加しやすさ」や万博イベントの運営支援など「活動内容への興味」という動機の方も多く、「ささやかなことでとても喜んでいただけたことが普段の仕事のモチベーションにもつながった」というお声も寄せられています。
――印象に残ったエピソードはありますか?
高安さん:地域密着型のイベント「みらいのたからばこ」のボランティアに参加された方から伺ったお話が印象的でした。
H2Oグループの社員は普段から、お客さまの潜在的なニーズに気づいてそっと手を差し伸べたり、喜んでいただく方法を追求したりする姿勢が自然と染みついています。
実際のボランティア現場でも「自ら気づいて誘導にまわる」「緊張しているお子さまに優しく寄り添う」といった日常業務で培ったスキルを発揮し、主催者や参加者の皆さまから、「サポートの質が高い」と大変喜ばれたそうです。
このような普段からの心がけが社会貢献に活かされる体験は、参加者自身のモチベーションにも繋がっています。長年地域に根差し「どうすればお客さまに喜んでもらえるか」「楽しんでもらえるか」を追求し続けてきた当社グループならではの関わり方だと感じています。
みらいのたからばこでのボランティアの様子
――ボランティアへの参加を通じて地域と人に寄り添うことで、従業員にどのような変化があると思いますか。
高安さん:ボランティアの現場では、地域に溶け込み、背景の異なる多様な方々とともに活動します。誰かのために主体的に動くことや、リアルに接しながら生まれる人と人との気持ちの通い合いは、当社グループで働く全員が普段の接客でも大切にしていることです。それを業務とは違う場でも体験し、地域のリアルな課題に触れることで、社内だけでは出会えない新しい視点や気づきを得ることができます。
こうした、地域や多様な方々への関心と共感力が、一歩踏み込んだ顧客基点の考え方を生み、当社グループが目指す「コミュニケーションリテイラー」として、地域社会になくてはならない存在であり続けるための大切な原動力になると考えています。
――今後ボランティア休暇制度において目指していることはありますか。
高安さん:将来的には「全社員が取得すること」を目標に掲げています。身近な社員が1人取得することで周囲の理解や周知に進み、他の従業員も取りやすくなります。だからこそ、今後も引き続き地道な周知を行い、どんどん取得の輪を広げていきたいと考えています。
より多くの社員が一歩踏み出せるよう、これからも関係部門と連携してサポートを進めてまいります。
実際にボランティア休暇制度を利用して、活動に参加した従業員2名にお話を聞きました。
――ボランティアに参加したきっかけや学び、印象的なエピソードを教えてください。
お得意様外商部 江崎さん:2024年から、海洋プラスチック問題に目を向ける糸島のビーチクリーン活動に参加しています。以前からボランティアに興味はありましたが、なかなか行動を起こすきっかけがありませんでした。そんな中、ボランティア参加時に休暇制度が利用できること知り、上司からも背中を押してもらったことで、絶好の機会だと思い参加を決めました。
糸島のビーチを歩きながら、漁具や釣り具だけでなく、食品のパッケージやペットボトル、タバコの吸い殻など、様々なごみを回収しました。自分の手で、一つひとつ拾い集める中で、海洋プラスチックへの意識が高まるとともに、豊かな環境を守っていくためにビーチクリーンはとても大切な活動なのだと実感しました。
また、一緒に参加された様々な立場の方々と交流できたことも貴重な体験となり、自分の視野が広がったと感じています。これからも地域と環境に貢献できるよう、少しずつでも自分にできることから取り組んでいきたいと思います。
糸島でのビーチクリーン活動の様子
阪急うめだ本店 グリーンエイジ販売部 厚ケ瀬さん:地域貢献活動の一環として私自身がリーダーとして毎月開催している清掃活動「GREEN AGE CLEANUP」の取り組みをさらに広げたいと考え、ボランティア休暇を取得しました。2025年に大阪市住之江区ATC周辺の清掃活動「ごみゼロアクション!〜大阪春の陣〜」、2026年にグループの労働組合が主催するスポーツごみ拾い「ユニオンDEクリーン」(扇町公園から阪急うめだ本店周辺)に参加しました。社外の団体や普段関わりの少ないグループ内のメンバーとの交流を通じて、楽しみながら環境保全について学び、自社の取り組みを発信できる良い機会だと実感しています。
「ごみゼロアクション」では他団体と協働で清掃を行い、ピッチトークで私たちの環境活動を発信した結果、光栄にも「ごみゼロアンバサダー」に任命していただきました。また、「ユニオンDEクリーン」では、イズミヤとの合同チームで戦略的にごみを回収し、優勝を果たしました。社内外の枠を超え、環境保全という共通の目的で連帯感を深めた経験を活かし、今後もサステナブルなまちづくりにコミットしていきます。
ごみゼロアクションでのピッチトークの様子


