エイチ・ツー・オーまち元気パートナーズ株式会社 代表取締役社長 杉本良平さん
人口減少や高齢化が進む中、「まちの活気」をどう次世代につなぐかは、多くの地域が抱える深刻な課題です。こうした悩みに寄り添い、行政や地域の方々と同じ目線でまちづくりに伴走しているのが、「エイチ・ツー・オーまち元気パートナーズ」です。
単なる計画立案にとどまらず、長年小売業で培ってきたコミュニケーション力や空間づくりのノウハウを活かし、そこに暮らす人々とともにまちの賑わいを創出しています。今回は、同社の代表取締役社長 杉本さんに、阪急百貨店の創業者小林一三が掲げた「大衆第一主義」と現在の取り組みとのつながりや、地域とともに描く未来についてお聞きしました。
(編集部)
――エイチ・ツー・オーまち元気パートナーズとは、どのような会社なのでしょうか?
杉本さん:当社は、H2Oリテイリンググループの「まち元気創造ビジネス」を担う専門会社として、2026年3月に設立いたしました。
設立の原点となったのは、2022年から手掛けた千里中央公園の再整備事業です。私たちは当時、パートナー企業と共に企業グループ「千里中央公園パートナーズ」という事業体をつくり、地域住民の皆さまと力を合わせて「共創型」のまちづくりに取り組んできました。この取り組みは、年間100件以上の視察やご相談が寄せられるようになり、2025年には国際的な賞「ワールドアーバンパークス・アワード」を受賞するなど、大きな反響を呼びました。
当初は社会貢献の意味合いが強かったのですが、これほどニーズがあるなら事業としてやっていこうと舵を切ったのが設立のきっかけです。
机上の論理を押し付けるのではなく、地域に愚直に通い、住民の皆さまのリアルな声や地域の歴史に徹底的に耳を傾けることから信頼関係を築くことが私たちの強みです。
公園の活性化だけにとどまらず、培ってきたノウハウを活かして、使われなくなった公共施設や駅前空間などの再整備支援や地域の潜在課題の発掘や構想立案、人が集まる仕組みの企画・運営、持続的なエリアマネジメントまで、ハード面とソフト面の両輪で「まちを元気にするサイクル」を一貫して支援しています。現在では、阪急阪神沿線を中心に10を超えるプロジェクトで自治体や民間企業と連携を進めています。
――小売事業者であるわたしたちが、なぜまちづくりのコンサルティングを手掛けるのでしょうか。
杉本さん:これまでのまちづくりは、まず調査や計画を立て、都市計画や産業・大学の誘致といった施策を固めていくやり方が主流でした。ただし、素晴らしい計画があっても、いざ地域の人々を巻き込んで動かそうとすると壁にぶつかるケースも多く見られます。また、「どうすれば人が楽しく関われるか」という視点が抜けてしまうと、せっかくのイベントも特定の参加者にとどまってしまいがちです。
だからこそ、私たちは常に「人」から入ります。小売業は、長年単にモノを売るだけでなく、人が集まり、出会い、対話が生まれる「場」と「にぎわい」をつくり続けてきました。私たちが培ってきた「接客で培ったコミュニケーション力」「人の心を動かす空間づくり」「人々を巻き込む企画・集客ノウハウ」は、まさに地域のにぎわいを再生・持続させる大きな力になります。
実際に、私たちが企画に加わり、子ども向けのイベントを行うと、これまで地域の催しに関心の薄かった若い子育て世代が集まってくださるようになります。「これからを担う人たちに見つけてもらい、楽しんでもらうにはどうすればいいか?」という小売りならではの視点があるからこそ、新しい賑わいが生まれるのだと感じています。そして、関西の人々の生活に根差し、信頼を寄せていただいている私たちだからこそ、提供できる価値があると実感しています。
舞洲で開催されたこどもの学校の様子
――事業を進める中での苦労はありましたか。
杉本さん:「千里中央公園パートナーズ」として活動していた頃は、自治体の担当者が小売事業グループにまちづくりを頼むという発想がなく、自分たちの役割や価値を理解していただくことに苦労しました。
「エイチ・ツー・オーまち元気パートナーズ」を設立したことで事業としての位置づけが明確になり、ご依頼をいただけるようになりました。また、独立した会社となったことで、より自由な発想とスピード感をもって現場の決断を下せるようになったことも利点だと感じています。
現在は、いただいた依頼に限られた時間の中でどう真摯に応えていくかという、「嬉しい悲鳴」をあげています。
――特に印象的な出来事を教えてください。
杉本さん:千里中央公園の私たちのラボの隣にローソンを作った時のことです。私たちが公園活性化に取り組む以前から、一人暮らしと思われる高齢の男性が散歩している姿を毎日のように見かけました。公園内の私たちの施設にローソンができたことによって、その方が2日に一度、決まったアイスを買いに来てくださるようになったんです。そして、ベンチに座ってアイスを食べながら、にぎわいが戻った公園を眺めて過ごされるようになりました。その表情が、以前よりも少し明るくなったように見えたのです。
売り上げとしては決して大きなものではありませんが、地域の人々を少しでも元気にするために、人生の潤いをもたらすために、私はこうした関係性を継続させていきたいと強く思っています。
千里中央公園にはにぎわいが戻りました
杉本さん:私は関東出身で、就職を機に関西にきたのですが、外から来たからこそ関西の人々が持つ阪急・阪神沿線、および当社グループへの愛着の深さを実感しました。当社グループは、阪急電車の創業者であり、「大衆第一主義」を掲げた小林一三が、沿線の人々の生活を豊かにするために作られたという歴史があります。まちづくりに取り組むのはDNAそのものであり、だからこそ沿線の人々に愛していただけるのだと思います。
生活に密着し、会社ごと愛されている文化を、次世代につないでいきたいと思っています。これこそ小売業から生まれた私たちにしかできないことだと考えています。
――地域の生活とともに歩んできた小売業のわたしたちだからこそ、担える役割ということですね。
杉本さん:はい。まさにその通りです。当社グループは「コミュニケーションリテイラー」という姿を目指しています。これは、単なるモノの売買を超えて、対話を通じてお客さまや地域の「共感」を生み、心の豊かさや生活の歓びを創出する存在です。
「エイチ・ツー・オーまち元気パートナーズ」の業務は、まさにこの体現そのものです。コミュニケーションを武器にして、リテールの枠をまち全体へと広げている感覚ですね。地域の皆さまと対話を重ね、空間をつくり、そこに人々が笑顔で集える時間を創出し続ける。ハードの再整備とソフトのにぎわいづくりの両方を通じて、地域に「共感の輪」を広げていく取り組みであり、グループの目指すビジネスモデルの最前線を走っていると自負しています。
旧伏尾台小学校で開催したイベントの様子
――最後に、これからの展望を教えてください。
杉本さん:直近では、手掛けている各プロジェクトで具体的なにぎわいや地域循環の成果を確実に形にし、その成功プロセスをモデル化して対応エリアを拡大していきます。ステップ・バイ・ステップで、地域と共存共栄しながら進めていきます。「まちのにぎわいづくりなら、まずエイチ・ツー・オーまち元気パートナーズへ」と言っていただけるような確固たる信頼を築くことが目標です。
そしてこれこそが私たちの最大の強みであると思っています。地域に根差した企業として、行政・企業・地域住民をつなぐハブとなり、関西をはじめ全国の地域がそれぞれの個性を活かして元気になるまちづくりに貢献してまいります。


